「仕事があることは嬉しいものなんです」

「残業削減には、全く取り組んでいないんですか?」(河合)

「無駄な仕事は極力なくしてますけど、もともとの仕事量が多いからどうにもなりません。仮に残業をなくすとしましょう。そうなると、必然的に社員の年収は減ります。そしたら増々、人手不足が加速します。賃金が低い会社に、人は集まりません。

 社員の中には、『もっと働かせてくれ』っていうのもいるんです。やっぱり給料が増えるのは嬉しいんだと思いますよ」

「給料が増えて喜ばない人はいないと思いますけど……。それって、肉体を切り売りしてるようなものですよね。社長さんの中には、社員の健康を第一に考え、残業を絶対にさせないという強い意志で、業務量を減らした方もいらっしゃいます。

『一時的に会社の売り上げは下がったけど、3年経ったらV字回復した。社員が元気になり、前向きに取り組むようになり、生産性が上がった』と言っていた社長さんもいましたけど……」(河合)

「そうですか。まぁ、いろいろですわな。リーマンショックのときは、うちの業界は結構大変で、会社が傾きかけました。でも、今は仕事が山ほどある。一度、会社が傾きそうになった経験してると、仕事があることは嬉しいものなんです。

 それにウツになる社員はいますが、全く同じように働いていても、元気にやってる社員のほうが多い。休みはちゃんと週休二日確保してあるし、祝日だって休めます。それを上手く利用して身体を休めるなり、ストレス発散するなりしてるんですね。私も若いときはよく、ため寝しました。

 もちろん人それぞれ体力や気力の限界はあるでしょう。その限界を知ることも大切だって、河合さん言ってたでしょ。それも含めての、ストレスマネジメント能力なんですよね?

 日本人がストレスに弱くなったとは思っていません。でも、ストレスをマネジメントするのがヘタクソになったんじゃないでしょうか。子どものときから至れりつくせりで育ってるから、自分で生活を工夫する機会が減っちゃったからね。

 目の前に仕事が山ほどあるのに、わざわざそれを放棄するより、ストレスマネジメント能力を高めたほうがいいと思いませんか。そのほうが社員だって、賃金が上がって喜ぶんですから。まぁ、いろいろな考え方があるんでしょうけど、残業を減らされて困る社員も多いと思いますよ」

……以上です。

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