誰もが「下」に落ちるリスクを抱えている
もし、「すべての女性を輝かせたい」のなら、非正規の女性たちの不安定さをいかに解決するかが大きな課題であることは、以上のいくつもの分析結果から明白である。
全世帯の4分の1が単独世帯で、おそらくこれからますます増えるに違いない。
貧困世帯率は男性単独世帯38.6%、女性単独世帯にいたっては59.1%。18歳未満の子と1人親の世帯に限ると貧困率は54.6%と半分を超える。
単身女性の貧困の解消には、給与の男女格差の雇用格差の是正が求められるのは言うまでもない。
ところが、先の「男女共同参画基本計画」では、以下の文言はあるが、具体的な数値目標や政策は記されていない。
――非正規雇用労働者やひとり親等、生活上の困難に陥りやすい女性が増加している中で、公正な処遇が図られた多様な働き方の普及等、働き方の二極化に伴う諸問題への対応を進めるとともに、困難な状況に置かれている女性の実情に応じたきめ細かな支援を行うことにより、女性が安心して暮らせるための環境整備を進める。――
きめ細かな支援? 美しい言葉だ。
これでは何年たっても「女性活躍」が進まなくて当たり前だ。
本来、社会問題は科学的根拠に基づいた政策(Evidence-based policy)で解決すべき問題であり、政府が強調する「数字」だけをメディアが取り上げるのは愚劣の極み。その結果、救うべき集団が切り捨てられているのだ。
「上」に立つ指導的地位の女性を増やすことがいっこうに進まないのも問題だが、非正規のシングル女性を減少させない限り、キラキラの未来は絶対にこない。
誰もが「下」に落ちるリスクを抱えているのが、今の社会だ。
20年には大人の10人に8人は40代以上、10人に6人は50代以上だ。
政策の手立てにすべき貴重な分析は存在するのにそれを生かさない。日本の偉い人たちは、いつになったらファクトをみてくれるのだろうか。
「人生100年時代を見据え、全世代型の社会保障制度へと大きく改革を行う」とは、
「荒波に耐えて生きろ!」というメッセージにしか聞こえないのは、私だけだろうか。
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