以下、いくつかの論文で確認されている証拠を紹介する。

【時系列でみた変化】
 ●働いている女性

  • 1985年の女性の労働力人口は2367万人、2015年は2842万人で、20.1%増。労働力人口総数に占める割合は、1985年の39.7%から、2015年は43.1 %に増加
  • 1985年の女性の就業者数は2304万人だったが、2015年は2754万人で、19.5%増
  • 1985年の女性の雇用者数は1548万人、2015年は2474万人で、59.8%増。雇用者総数に占める女性の割合は、1985年の35.9%から、2015年は43.9%でほぼ一貫して上昇傾向
  • 1985年の女性の一般労働者の平均年齢は35.4歳だったが、2015年は40.7歳に上昇

 ●女性の雇用形態

  • 1985年は女性の「正社員」994万人、「非正規雇用」470万人、2015年は「正社員」1043万人、「非正規雇用」1345万人。「正社員」は1985年比4.9 %増に対し、「非正規雇用」は186.2%増
  • 「非正規雇用」のうちもっとも多い「パート・アルバイト」は1985年比152.5%増
  • 23~34歳の未婚女性の「正社員」の割合は1988年は71%だったが、2016年には57%まで下落

【賃金格差】

  • 同じスキルを持つ個人が「正社員」から「パート・アルバイト」に転職すると、女性の場合、時間あたりの賃金が2割減る
  • フルタイム労働者の賃金格差は72.2(男性=100)
  • 先進主要国に比べ、日本の男女間格差は大きい。スウェーデン88.0、フランス84.9、アメリカ82.5、イギリス82.4、ドイツ81.1

【初職が非正規から正社員への移行】

  • 大卒男子は経過年数とともに正社員移行が進むが、女性については未婚に限定してもほとんど進展なし

「働く時間を選びやすいパートなどが増えている」のではない

 ……ふむ。実態を理解していただきたくて、少々数字を並べすぎてしまった。

 つまり、アレだ。これらを簡単に言うと……

 「30年間で女性が働くのって、結構当たり前になったけど、非正規ばっかじゃん。3倍近くに増えてるってすごいよね~~。

 しかも、未婚で非正規の女性が半分近くいるって、大丈夫かな。せっかく大学出ても正社員かどうかで稼ぎも変わってくるってことでしょ?

 年収300万と240万じゃ、えらく違うよ~~。非正規はさ、給料あがらないし~~、結婚したくても男の人も大変だしさ~。これじゃあ、子どもなんか増えるわけないよね~~」

ってことだ。

 さらに、一橋大学名誉教授の大橋勇雄先生が「非正規雇用が増えた原因」について分析したところ、労働力の構成変化で説明できるのは36%程度で、企業の政策変化の影響が43.0%~46.3%と大きいことがわかった。

 具体的には、企業が女性パートタイマーの基幹化を進めたことが主たる原因であり、女性の労働市場参加で説明できるのは全体のわずか16.7%で、マスコミで指摘されるほど影響は大きくないと指摘。

 冒頭で引用した新聞記事の「働く時間を選びやすいパートなどが増えている」という文言は、イメージでしかないのである。

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