労働基準法が何のためにあるのか?
 法律違反の責任が、誰にあるのか?

 高橋まつりさんの事件が起きた2015年時のトップは、訃報をどんな気持ちで聞いたのか?
 過労死ラインギリギリで働かされている人たちは、“トップであるアナタ”に、命を搾取されているということをどう考えているのか?

 聞きたいことは山ほどある。

 だが、「現社長の山本氏が公開の法廷の場に立った」という事実が、日本中のトップの意識改革に繋がればいいと、心から願うばかりだ。

 実は東京ではあまり報じられていなのだが、大阪では今年に入ってから略式起訴命令を不相応等とする判断が相次いでいる。

 4月には、全国規模でレストランを運営する企業が、従業員7人に月40時間超の違法残業をさせたとして、社長が出廷した。

 「社員の勤勉さに甘えてしまった」

 こうトップは謝罪したが、同社は過去7年間に長時間労働や残業代の未払いを理由に、労働基準監督署から18回もの改善指導を受けていたのだ。

 ……いったいどれだけ甘えていたんだ? 

トップが個人的に責任を問われるケースも

 さらに、近畿や東海にスーパーマーケットを展開する企業も、法人として労働基準法違反罪に問われ、“顔”である社長が出廷。

 「反省している」

 とこちらも謝罪したけど、過去11年間で31回も、労働基準監督署から是正勧告を受けていたというのだから、開いた口がふさがらない。

 ……いったい法律を何だと思っていたのだろう?

 ちなみに大阪でのこれらの裁判は、すべてひとりの裁判官によるものとの報道もある。

 この裁判官はきっと「過労死や過労自殺を撲滅する責任がある」と考えてくれたのかも、と個人的には受け止めている。

 「ま、まさか、これから先、経営者が法人の顔としてだけではなく、個人として罪を問われるなんてことはないよね?」

 いいえ、ある、と思う。
 だって、過去には以下のような事件があり、社長が個人的な責任を問われた。

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