人間は、たった一言で「自分の存在価値」を見出せる

 「有意味感(sense of meaningfulness)」――。

 これは人間の生きる力である、Sense of Coherence(=SOC)のエンジンになる感覚で、半歩でも一歩でも前に進もうという、モチベーション要因となる感覚を示した概念である。

 「意味がある」という感覚は、自分が携わっている仕事などに向けられることもあれば、自分の存在意義そのものに向けられることもある。

 有意味感が高いと、「ストレスや困難は自分への挑戦で、これらに立ち向かっていくのに意味がある」と考え、前向きに対処できる。どんな困難であろうとも、どうにかして前に進んでいこうと生きる力が引き出される。

 一方、有意味感が持てないと、生きる力が萎える。自暴自棄になり、ストレスの雨に対峙する傘をさそうという気力もなくなり、ひたすら雨に濡れ続けてしまうのだ。

 人間というのは、実に厄介な動物で、
「他人の評価なんか気にするな」と思う一方で、「他人に認めて欲しい」と願う。
「放っておいて欲しい」と思う一方で、「自分の存在に気付いてほしい」と願う。 他者の存在を「めんどくさい」と思う一方で、他者に頼られるとうれしくなる。

 私たちは他者のまなざしを通してでしか、「自分」に確信が持てない。いや、正確に言うと「できない」わけではなく苦手。自分と向き合うことを、何よりも恐れる人間は、「あなたがそこにいるってこと、ちゃんと分かっていますよ」というメッセージを感じたくて、生きているのだ。

 逆説的に言えば、「あなたは大切だ」「あなたがそこにいることは、ちゃんと分かっていますよ」という価値あるメッセージを他者から繰り返し受けることが、生きる力をもたらす。たった一言、「ありがとう」と感謝されたり、「がんばってるね」と認めてもらえるだけで、「自分の存在価値(意味)」を見い出すことができ、有意味感が高まっていくのである。