そうなのだ。チームを支える“片桐さん”がいるからこそ、メンバーたちはふんばることができる。ミッションが明確で、誰かの為に戦っている現場には、必ずこういう縁の下の力持ち的存在がいる。

 以前、取材したある企業は、“すべて”のメンバー参加の社員旅行を行っていた。

 旅費は全額会社負担。その年の売り上げによって、日帰りだったり海外だったりさまざまだが、正社員、非正規社員、お掃除の方など、すべての人たちが参加する。

「同じ会社で働いているのだから、一緒に行って当たりまえ」

 創業時からの会社の方針が、何十年にもわたって、トップからトップに受け継がれた。誰もが知る、日本を代表する長寿企業のひとつであるこの会社では、社長からトイレをお掃除してくれている“おばさん”まで、みんな一緒に旅行に行くのが恒例だったのである。

 私の知る限り、元気な会社やチームでは、役職や役割、性別、年齢を超えて、「人」として接する瞬間を大切にする。いかなる人も区別することなく、ひとりの「人」として敬意をはらい、人と人のつながりに投資する。それがチーム力を高め、個人のパフォーマンスとモチベーションの向上につながることを、トップがわかっているのだ。

 そして、例外なくそういった企業のトップは、温かい。

 目にみえない力をきちんと評価できる、しなやかな心を持つ人だ。

変人に悪い人はいないし、みんな生真面目だ

 庵野秀明監督も、きっとそういう方なんだと思う。

 奥さんである安野モヨコ氏の漫画「監督不行届」では、“カントク”の超オタクで愛すべき生態を伺い知ることが出来る。

 結婚式で仮面ライダーのコスプレをまとい、出席した人たちに同人誌を配ったり、効果音などの擬音をすべて口にしないと気が済まなかったり、どんなに深刻な場面でも好きなアニメソングが流れた途端、なりふりかまわず大声で歌い出したり……。面白すぎる。

 庵野監督は大の風呂嫌いで、一年間ほど入らなかったこともあるという逸話の持ち主だが、その理由もこの漫画には描かれている。

 「お風呂に入るとやさしさ成分が流される。お風呂に入らなければ入らないほど、人にやさしくなれる」のだそうだ。

 んな、バカな(笑)。だが、こういうことを言う人だからこそ、“甘利大臣”を起用したり、片桐はいりさんを30秒だけ登場させたのだと思う。

 「天才はみな変人だった」というのが私の自論なのだが、“カントク”もやっぱり変人で、私はそういう人が大好き。変人は、確かに変な人だが決して人を傷つけることがない。自分も変だから、変な人を差別しない。でもって、変人は、大抵、メチャクチャ真面目な方。

 「真面目とはね、君、真剣勝負の意味だよ」との名言を残したのは文豪の夏目漱石だが、これまでみなを驚かせてきた庵野監督の桁外れの才能は、腹の底からの真面目さが引き出した。

 でもって、シン・ゴジラを止めたのも、巨災対のメンバーの無骨なまでの真面目さだったと確信している。

 と、いつになく、いや、いつも以上に自論を展開しているが、日経ビジネスの特集の趣旨が「私の視点」でのシン・ゴジラなので、お許しください。

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