障害者自立支援法の下、障害のある人たちの課題が「働くこと」「職業的自立」へと大きく変わり、障害者が働く機会が増える半面、人間としての価値や豊かさが無視されてしまってはないだろうか。障害者総合支援法に名称は変わり、「基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい」という文言が明記されたけど、障害のある人の生活が障害のない人の生活から「隔離」されている。そう思えてならないのである。

耳を疑いたくなるような問題行動の数々

 障害者雇用の問題はそれだけではない。

 経済的虐待が8割以上を占めるので、「心理的虐待8%、身体的虐待6%」という数字をつい見逃してしまいがちだが、100人のうち6~8人が心理的、身体的虐待を受けている事実は深刻に受け止めなければならない。あくまでも私の憶測だが、表面化していない虐待を入れると1ケタで収まる数字ではない。というか、それ以前に先の経済的虐待もある意味、「心理的虐待」だと個人的には考えている。

 これまでフィールドインタビューに協力してくださった方の中には、障害者雇用のカウンセラーや、企業で障害者雇用担当の方たちが何人かいて、耳を疑いたくなるような数々の問題行動を教えてくれた。

 耳が不自由なのに電話番をさせられたり、1日中トイレ掃除をやらされたり、「義務だから雇っているだけ」「何もしなくていい」「いいな~。来るだけでおカネもらえるんだからな」「アンタが辞めたら、楽になるなぁ~」「雇うのにコストがかかっている」などと暴言を浴びせられたり。

 「健常者」たちの心ない卑劣な仕打ちがきっかけで、会社に行けなくなってしまう障害者の方が少なくない。また、心理的虐待は可視化しにくい特性もあるため、虐待が日常化して精神的なダメージを受ける人たちもいる。

 逆に、現場に精通するカウンセラーによると「障害者自身が『自分には無理』と障害を言い訳にするケース」もあり、雇用する側とトラブルになることもあるという。
 「苦しいのは障害者だけじゃないですよ。一緒に働いてる僕たちの苦しみもわかってほしい」

 こう訴えるのは障害者と同じ部署で働いている42歳の男性である。

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