冒頭で書いた通り、教育パパ問題は杉田水脈議員の「LGBT発言」と根っこはつながっている。

 少子化対策のためにお金を使うという大義名分があります。しかし、LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり「生産性」がないのです。

 「常識」や「普通であること」を見失っていく社会は「秩序」がなくなり、いずれ崩壊していくことにもなりかねません。私は日本をそうした社会にしたくありません。(杉田議員の発言全文より抜粋)

 私はこの発言を聞き、19人の入所者が殺害された「津久井やまゆり園事件」を即座に思い出した。「生きてる意味がない」と優生思想を掲げた犯人が、尊い命を奪った、残虐で許せない2年前の事件だ。

 「生きてる意味がない(無駄な命)」という犯人の言葉は、杉田議員の「生産性がない」と同義だと私は感じたし、杉田議員の「普通」という発言と「障害者」という言葉がクロスした。あれはLGBTの問題であってLGBTの問題ではなかったのである。

 障害学(disability studies) という学問がある。

 従来の医療モデルが「障害そのもの」にスポットを当てるのとは異なり、障害学は「障害を生み出す社会について考える」学問だ。私の専門とする健康社会学と通じる部分があるので少しばかり大学院のときに学ばせてもらった。

 障害学の研究者のひとりが、「身体に障害を持つ人が、“障害者”と区別されるようになったのは、産業革命と大きく関係している」と教えてくれたことがある。

 産業革命によって誕生した「歯車としての人」は、生産性を上げることだけを目的に存在している。

 生産活動にプライオリティを置く社会である以上、障害者は社会における「無駄な人」にならざるをえない。障害学的に考えれば、障害者という概念は「正当に働けない人を見分けるためのものでしかない」のである。

 だがここで、先の「生産活動にプライオリティを置く社会である以上、障害者は社会における「無駄な人」にならざるをえない」という文章の「障害者」という部分を、「高齢者」「病を患った人」「働きながら介護している人」「働きながら育児をする人」などと置き換えてみると……悲しいかな文章は成立してしまうことがわかる。

 つまり、杉田議員の発言はどこを切り取っても許せるものではない。だが、そうした考えを持つのは果たして杉田議員だけなのだろうか。社会のどこかに「リトル杉田」のようなものが脈々と潜んでいるのではあるまいか。

 資本主義社会で生きる以上、生産性という概念を拭い去ることはできない。資本主義社会で生きる私たちは、血流のうねりの中まで「カネ」という価値観が流れ込んでいる。

 人間の価値は何か? それはたとえば、最近、山口県で2歳の男児を発見してくださった大分県の尾畠春夫さんにもっと学ばなきゃいけないのだ。

■訂正履歴
記事中の人名2カ所に誤りがありました。お詫びして訂正します。記事は修正済みです。 [2018/8/21 7:35]

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