親が自分のコピーを作ろうとしている

 「私、新卒採用で面接官だったんですね。その時にうちの会社を選んだ理由を聞いたら、『父親に勧められた』と答えた学生がいたんです。

 最近は模範解答もどきを答える学生が多いので、新鮮だったんですけど、あまりに素直すぎますよね。だって20歳をすぎた若者が、堂々と父親に勧められたとは、ちょっとね。

 それで部のメンバーと飲み会があったときに、その話をしたんです。そしたら地雷を踏んでしまったようでして。『親が決めることの何が悪い?』と同僚に食いつかれた。

 彼はとてもデキる社員で、上からの評価も高い。普段はめったにプライベートのことを話したりしないので、私も驚いてしまったんです。

 なんでも、評判のいい小学校に子供を行かせるためにお引越しをし、プログラミング、英語、コミュニケーションスキル、人間力向上などの塾に通わせて、いや~、とにかくものすごい教育パパ。しかも、そのときの話し方が高圧的かつ自分の熱心さに自己陶酔していて、まるで子育て依存症みたいでゾッとしました。

 だいたい就職先まで親が決めて何が悪いって言うけど、自分のコピーを作ってどうするんですかね。

 偉そうなこと言えませんけど、子に恥ずかしくない生き方をすることが最大の教育でしょ。親が背中を見せるって昔から言うじゃないですか。僕は古いんですかね」

 こう呆れたのは某大企業に勤める40代後半の男性会社員だ。

 自分のコピーをつくる、か。なるほど。彼が言いたいことはなんとなくわかる。

 しょせん会社なんてものは理不尽だらけで、自分の思い通りになんかならない。ましてや親が決めたとおりになるわけでもない。

 どんなに「パパ」の選択してきた道のりが、「エリートの勝ち組」につながるものだったとしても、意志あるところに道は開けるのであって、子どもの道のりがそうなるとは限らない。

 たとえ親子でも全く違う人格であり、子どもを思い通りできるなどおごりだ……。

 おそらくそんなことを言いたかったのだろう。

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