念のため断っておくが、「女性リーダーは男性リーダーより劣る」とか、「女性研究者は男性研究者より劣る」とか、「女性医師は男性医師より劣る」などの研究結果を私はこれまで見たことはない。
「女性医師が患者の死亡率を下げる」調査結果が相次いでいる
むしろ逆。「性差はない」「女性リーダーの方が部下の能力が発揮される」ことに加え、医学会においては「女性医師が患者の死亡率を下げる」(内科、外科)、「女性医師の方が患者の再入院率を下げる」(内科)という調査結果が相次いでいるのである。
米国ハーバード大学公衆衛生大学院が行った「Comparison of Hospital Mortality and Readmission Rates for Medicare Patients Treated by Male vs Female Physicians 」というタイトルの論文は米国で話題になり、ワシントンポスト、ウォールストリートジャーナル、CNN、ハーバードビジネスレビューなど、多くのメディアでも取り上げられた。
この調査では2011~2014年にアメリカの急性期病院に入院した65歳以上の高齢者およそ130万人のデータを分析。医師の性別により患者の「30日以内の死亡率や再入院率」を比較したところ、女性医師が担当すると両方とも低くなる傾向が認められたのだ。
具体的には女性医師だと「30日以内の死亡率が0.4%、再入院率は0.5%下がる」(死亡率0.4%は過去10年間の死亡率改善とほぼ同レベル)ことがわかった。
こういった結果が出ると「でも~、それって~女の医師が単に症状の軽い患者を診てるケースが多かったからじゃないの~?」という意見が出る。
そこでこの調査では、
- 男性医師と女性医師の診療している患者の重症度を同レベルにする
- 同じ病院で働いている男性医師と女性医師を比較する
などの補正を行い(統計的な手法)、環境要因の影響を排除。
加えて、
- 入院患者の診療しかしない内科医である“ホスピタリスト”のデータを用いた分析
も行い、調査の信頼性を高めた。
ここまで丁寧に分析をした結果が、「女性医師の患者の死亡率を下げる」という結果だったのである。
この調査が行われた背景には、「この患者は重症だから、Aさん(女性)では難しいだろう。Bくん(男性)に担当してもらおう」とか、「女性の医者では不安です。男性の医者を主治医にしてください!」といった“ジェンダー・バイアス”が米国で起こりがちだったため、それ払拭する目的があった。
当初の仮説は「性差なし」。ところがいい意味で結果は研究者たちを裏切った。
「性差がない」どころか、「女性医師で死亡率が下がる」というエビデンスが得られてしまったのだ。
では、なぜ「女性医師が患者の死亡率を下げるのか?」
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