
今から5、6年ほど前だろうか。
ある医療系学会の基調講演の講師に呼ばれた時、「女性医師が増えて困っている」とこっそりと教えてもらったことがある。
「うちの教室(医局)には女性医師はいらない。入れないでくれ」と訴える先生も多く、困っている、と。
「育児中の女性医師は常勤勤務から非常勤になるケースが多い。世間からはセレブな女医に見られるからプライドだけは高い。そういった面からも女性医師は嫌われてしまうんですよね。
あとこれは昔からあることですが……女性医師というだけで差別をする男性医師がいるのは事実です」
こう「嫌がられる理由」を話していた。
であるからして、例の東京医大での、女子の合格者数を抑えようとする得点操作問題は残念だし憤りを覚えたが、さほど驚かない自分もいた。
ただ、一部の報道では「緊急の手術が多く勤務体系が不規則な外科では、女性医師は敬遠されがち」「医師のブラックな現場がそもそもの問題」との意見が散見されたが、女性医師を嫌うのは外科だけでも、ブラックな現場だけでもない。
だって冒頭の医師は、
「早くから女性医師が働きやすい職場にしようと取り組んできた結果、女性医師が増え、逆に女医医師が嫌われることになってしまった」
と、頭を抱えていたのである。
つまり、「女性医師」という存在そのものが面倒くさい存在だ、と。
「女性医師というだけで差別する男性医師がいる」。この一言こそが問題の根っこに深く深く広がっていて、
「結婚や出産でやめてしまうから」
「育児で緊急時対応できないから」
「だから女性ではなく男性」
というのは言い訳でしかない。
とどのつまり「女性医師」の存在そのものへの嫌悪感が「入口から排除しよう」と点数削減という動きに繋がったのだ、と個人的には理解している。
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