それは「主観的健康」が、ストレス状態に強く影響を受けていることを意味する。

 ただし、ストレスといっても、「仕事で失敗をする」とか、「上司から怒鳴られた」というような一時的なものではなく、

  • 長時間労働が常態化し、家庭で過ごす時間が取れない
  • 常に仕事の納期に追われている
  • 常に要求の高い仕事を求められる
  • 裁量権を与えられていない
  • 上司や同僚から支援を得られない
  • 雇用形態が不安定

といった慢性的なストレスである。

 今年1月。国立がん研究センターが、全国の40~69歳の男女約10万人を20年近く追跡し、長期間ストレスを感じている人は発がんのリスクが高くなることがわかったという調査結果を公表した。

 この調査は90年(または93年)の調査開始時に「あなたは普段の生活で、どの程度ストレスを感じていますか?(自覚的ストレス)」との問いに、「少しだけ」「平均的(人並み)」「たくさん」の三択に答えてもらい、その後のがんの罹患率との関連を分析した(追跡調査中に約1万7200人ががんに罹患)。

 その結果、実に興味深いことがわかった。

自覚的ストレスと主観的健康

 最初の分析では、「調査開始時の自覚的ストレス」とがんの罹患率との関連を調べた。その結果、統計的に有意な関連は認められなかった。

 そこで、「調査開始時の自覚的ストレス」と「5年後調査時の自覚的ストレス」の両方を用いて分析したところ、「両方でストレスの高かったグループ」は、「両方とも低かったグループ」に比べ、全てのがんに罹患するリスクが11%上昇していたのだ。

 開始と5年後の両方とも「ストレスが高い」と感じていることは、慢性的なストレスにさらされていることを意味する。

 しかも、この傾向は特に男性で顕著で、臓器別では、肝がん、前立腺がんでリスクが高まることもわかった。

 もちろん「ストレスへの自己認識」と「主観的健康」は、100%イコールではない。

 だが、主観的健康に関する数多くの調査結果でストレスとがんや心疾患との関連を報告されている限り、「私は健康です!」と胸を張って言える社会や職場を作ることがWHOの「健康の定義」の真意だと思うわけです。

 慢性的なストレス地獄で働いてる人たちは、ストレスの雨に鈍感になりがちである。

 だが、そのシトシトと降り続く雨が確実に心身を蝕んでいる。

 たかが「働き方改革」。されど「働き方改革」。

 少なくとも1日の三分の一を職場で過ごすビジネスパーソンにとって、職場環境は「その人の寿命までをも左右する極めて大きな役割を担っている」といっても過言ではない。

 ただ、残念なのは職場環境をよくしようとどんなに現場が頑張ったところで限界があるってことだ。

 「鶴の一声」。そうなのだ。トップがいかに真剣に職場環境の改善に努めるかどうかで、そこで働く人の寿命や病気にかかるリスクまで変わってきてしまうということを、もっともっと経営者には認識していただきたいのです。

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