近い将来「1075万円以上」という年収制限はなくなり、全ての「正社員」が労働時間規制から除外される。「専門職」の枠は営業まで広がり、非正規として雇用される。
つまり、多くの人たちが年収200万円程度の非正規として、働かせられる時代が到来するのである。
これは日経連(現経団連)が1995年に打ち出した「新時代の『日本的経営』」に書かれているもので、現在に至るまで上記の3分類に沿って雇用形態は確実に変わってきた。
「雇用柔軟型グループ」とは非正規のうち、パート・アルバイトなど。一部企業では経理などのアウトソーシングが進んでいるが、正社員経理=一般職は順次非正規となり、時間給・昇給なし。前回取り上げた「外国人労働者」もこの中に入ることになる。いわゆる「アンダークラス」に分類される人たちである。
「高度専門能力活用型」は非正規のうち、「専門型裁量労働制」の契約社員などで、今回提出されなかった「企画業務型」の裁量労働制も含まれる。最近メディアに登場することが増えた「フリーランス」もこのグループだ。
エリート中のエリートだけが正社員に
そして、最後が「長期備蓄能力活用型」で、ここだけが正社員だ。サラリーマン社会のエリート中のエリートだけが、正社員という特権階級を手に入れ、ボーナスをもらい、昇進し、昇給し、退職金と年金をもらい、「老後どうしよう?」と心配することなく生涯を送ることになる。
高プロの導入を進める人たちは決まって、
「新商品やソフトウエア開発者、アナリストなど、従来の労働時間に縛られず自由で自律的な働き方をする人材を育てるために必要な制度だ」
と主張するが、これはただの建前論で、本音は投資家のために人件費をギリギリまで切り詰めたいだけ。
「意欲ある人にとってはいい制度だ」
「そうそう。成果を高めて、自己実現できるし!」
「生産性が向上すれば、企業も収益を増やせるし、労使双方ウィンウィンじゃん!」
と賛成派は言うけど、彼らはその「先」に待ち受ける悲劇がわかっているだろうか?
「残業代とか下手につける約束しちゃってるから、ダラダラ働くんだよ」と吐く人たちは、4割超の企業で違法残業が確認されている事実を、どう説明するのだろうか?
そして何よりも問題なのは、上記の3分類が「コスト削減」だけを目的にし、そこに「働く人の健康」という発想が微塵も存在しない点だ。
Powered by リゾーム?