ハイパフォーマーを生む「計画的訓練」と「意志力」の関係

 そもそも「Grit(:グリット=意志力)」という概念が生まれたのは、米フロリダ州立大学心理学部のアンダース・エリクソン(K Anders Ericsson)教授が提唱する「計画的訓練」がきっかけだった。

「優れたパフォーマーと、パフォーマンスを発揮できない人の違いは、不変のもの、すなわち遺伝子に定められた才能によるものではない。このような違いは、生涯にわたって行われる、パフォーマンス向上のための計画的訓練(deliberate practice)によって生じる」

 エリクソン教授は、こう世の中に訴えたのである。

 米誌「ザ・ニューヨーカー」のマルコム・グラッドウェル氏が世の中で“天才”と呼ばれた偉人たちを調べ上げ、導き出した

「彼らは生まれながらの天才ではない。1万時間ものトレーニングを積み重ね、天才と呼ばれる能力を開花させたのだ」

という「1万時間の法則(10000-hour rule)」は広く知られているが、これこそが「計画的訓練」である。

 一方、計画的訓練の重要性が明らかになってからというもの、世界中の研究者たちから、

「何をもって計画的訓練というのか?」
「どんなやり方でも、1万時間トレーニングすればいいのか?」
「1万時間も努力を持続させるには、どうしたらいいのか?」
「それができること自体が、ある種の特別な能力なんじゃないか?」

などなど、さまざまな議論が巻き起こった。

 そこで注目を集めたのが、「Grit(:グリット=意志力)」。「Gritこそが、計画的訓練を可能にする」ということが、さまざまな実証研究で認められたというわけ。

 そして、今回。彼は“意志力”が、「困難を乗り越えるための資源」や「計画的訓練の源泉」だけではないことを教えてくれた。

 意志力がないと、義務的になる――と。

 義務でする仕事は、楽しくない。満足感や達成感を得ることもない。やらなきゃならないから、するだけのこと。言われたことを淡々とやるだけ。義務感の仕事の主語は「自分」ではなく、「他者」だ。

 だが、意志力を意識すれば、少しだけ変わる。送られてきた別紙には、彼の夢が書かれていた。夢を夢で終わらせない人と、語るだけで満足する人の違い。それが「そこに意志力があるか、ないか」だということを、彼は教えてくれたのだ。