というわけで前置きが長くなったが、今回は「圧迫面接」について、アレコレ考えてみる。
まずは学生とのやりとりから。
「録音は『圧迫面接対策』のためにやるんです。
圧られて(圧迫されて)、メンタル低下しちゃったヤツとかいるし、就活アドバイザーに『面接は密室だから危険。企業に危機感を持たせる上でも、面接の録音は必須』って言われたりするみたいです」
「圧迫面接って、どういう面接なの?」(河合)
「『死ね』『そんなんで給料もらえると思ってるのか』
とか、
『大学の成績、頭悪すぎだろ』って言われたっていうのを聞いたことはあるけど、実際に言われたって人は周りにはいない。
でも、『なぜ責め』は多い。みんななぜ責めにやられるんです」
「なぜ責め?」(河合)
「なぜ」とずっと聞かれ泣き出す人も
「例えば『キミ、海外留学してるけど、なぜ留学したのか?』とか」
「それ、普通に聞くでしょ?(笑)」(河合)
「いや、それだけじゃなくて、なぜなぜなぜ、ってず~っと聞いてくるんですよ。例えば『米国の文化に触れてみたかった』って留学の理由を答えると、『なぜ、米国だったのか?』『米国の文化って何か?』とか。とにかく答えるたびに、言葉尻を捉えてツッコミまくる。学生が答えられなくなるまで圧かけて、女子とか泣き出す人もいるって」
「面接する側は、ホントに知りたいから聞いてるだけなのでは?」(河合)
「でも、泣き出すまで圧かけるのって、ひどくないっすか? 普通に聞けばいいと思うんだけど」
「録音したものは何に使うわけ?」(河合)
「訴えるときに、自分の正当性を示すためですよ。就活アドバイザーに聞いてもらって、圧迫面接か判断してもらうヤツもいるって」
……ふ~む。なんだかなぁという感じなのだが、どの学生とのやりとりもこんな感じだった。
泣き出すね。う~む。
かれこれ10年近く学生に講義していて感じるのは、今の学生はプレゼンしたり、意見する力は高いが、ツッコミに弱い。とんでもなく弱い。
「それ、なんで?」と聞いただけでひるみ、とりわけ根本的な質問を聞くと貝になる。「聞かなかったこと」にする学生までいて、「えええ?? わ、私の質問スルー??」と問いかけると、バツ悪そうにそのままうつむいてしまったりで。怒る気にもならなかった。
子どもの頃から「大丈夫? あれは? これは? どう?」と、常にオトナたちに気にされて育ったため、ゼロから文脈を組み立てる力が極めて低いのである。それに拍車をかけたのが「プレゼン教育」である。
学生たちのプレゼン力は本当に高い。パワポや動画を巧みに使うので、「それ、教えて!」と何度も学生に教えを請うた。が、常に彼らのコミュニケーションは、一方通行で、とりわけ予期せぬ「返し」に過剰なまでビビる。
だから、面接でも、ちょっと答えに窮する=圧迫面接、と受け止めてしまうのだろう。それに輪をかけるのが、学生を支える「オトナ」の存在である。
就職のための専門学校は私たちの時代からあるけど、今は面接対策のために家庭教師を雇う家はめずらしくない。
Powered by リゾーム?