「こんな給料じゃ生きていけない。賃金を上げてくれよ!」と、抗議するドライバーに対しカラニック氏は全く聞く耳を持たない。それでも食い下がるドライバー。そして、カラニック氏は、

 “Some people don’t like to take responsibility for their own shit! ”( 何でもかんでも人のせいにしやがって。ふざけんな!)

 と吐き捨て、車を降りていってしまったのである。

 なんとも……。

 似たようなタイプは、日本にもいますね。

 「競争に勝ちさえすればいいんだよ。勝つ努力をしないオマエが悪いんだよ」と、勝者の特権を振りかざす……。どんなに能力があろうとも、最低――です。

 いずれにせよ、同社はセクハラやパワハラが疑われる215件のうち、現時点で54件の差別、47件のセクハラ、33件のイジメが確認され、20人超を解雇。残りの57件は、調査継続中だそうだ(日本経済新聞朝刊 6月8日付「米Uber セクハラ20人超解雇」)。

 また、カラニック氏は、Apple Musicの消費者マーケティング責任者、ボゾマ・セイントジョン氏(女性)を、最高ブランド責任者(CBO)に迎え入れるという目玉人事を発表。Uberを「アップルのような人々から愛されるブランド」にするのが目的だそうだ(こちら)。

 215件のセクハラやパワハラの疑いって……。いったいどんな会社なんだ。しかも、競争に勝った社員には人事部も手を出せず、トップの側近としてやりたい放題って。トップの“お友達”に周りは忖度するしかないっていうのは、万国共通なのだろうか。

 そういえば、Uberは「空飛ぶタクシー」構想を打ち出していたけど、アレってネガティブなイメージを“夢のあるお話”で払拭するのが狙いなのかも、と思ったりもする。

 計画では3年以内の実用化を宣言しているけど、。「何でもかんでも人のせいにしやがって。ふざけんな!」的プレッシャーで、新たな被害者が出ないこと祈るばかりだ。

 カラニック氏は「魂を入れ替える」と宣言し、先のセイントジョン氏以外にも、米ハーバード大学ビジネススクールのフランセス・フレイ教授を副社長に起用する方針も明らかにしているけど、「勝つ」ことに執着してきた人の価値観を変えるのは容易ではない。

「成果主義は麻薬だ」

 もちろんいかなる世界にも、競争はつきものであることを否定する気はない。

 だが、結局のところ、競争に過剰に執着する人の多くは周りよりもたくさん稼ぐことにプライオリティを置き、競争に勝った人だけを「価値ある人間」と評価し、勝者は権利を得てしかるべきと信じ込んでいる。

 世間からはカリスマだの成功者と持ち上げられ、その高揚感に酔いしれ、「負けていく奴は、努力が足りないんだよ」と切り捨て、「カネで買えないものはない」と平然と言い、マグロのように止まることなく泳ぎ続ける。

 止まった途端に自分が終わるような気がして、その恐怖から逃れるために、どこまでもどこまでも競争に執着する。

 あれだけ世間から評価されたベンチャーの創業者が、「チームA」 に特権を与え、ドライバーに無慈悲に対応する、なんて馬鹿げた行動を繰り返したのも、「どれだけ人よりも多く稼ぐかが大切。そうしないと社会的地位を手に入れられない」という経験が骨の随までしみ込んでいるためとしか、私には思えないのである。

 以前、インタビューした人が、「成果主義は麻薬のようなもの」と話してくれたことがある。

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