「このままでは自分にとってもマイナスになる」と考えた彼女は、出来たばかりの新しいチームに移る。そこでは充実した日々を過ごし、彼女が開発した製品が世界中で使われることになるなど、すばらしい経験をする。
で、その間に彼女は、他のエンジニアの女性たちも自分と同じようなセクハラを受け、同じように人事部から“初犯”と告げられていたことを知る。
人事部も上層部も“競争に勝った優秀な社員”の愚行を隠蔽し、明らかに特別扱いをしていたのだ。さらに、社内には性差別も横行。社内を見渡してみれば、当初25人いた女性エンジニアが6人まで減少していた。
そこで彼女はセクハラや性差別の報告書をまとめ、人事部に提出。すると上司から「自分は何が違法で何が違法でないか熟知している。キミのことを切ろうと思えばいつでも簡単に切れる」と、脅された。その上司も「ハイパフォーマー」として評価されている人物だったのである。
「その1週間後、新しい就職先を見つけ、Uberを辞めました。最後の日、女性の割合を計算してみると、150人以上のエンジニアのうち女性はわずか3%でした。
Uberで過ごした時間を振り返ると、エンジニアとして最高の仕事ができる機会をもらえたことに感謝しています。自分が開発した製品についても誇りに思います。
ただ、上記に記した出来事は、すべてバカげていて笑い飛ばすしかありません。奇妙な経験。変な一年」(彼女のブログを簡約)
ブログはこう結ばれていた。
CEOも暴言を吐く
ファウラーさんののブログは瞬く間に拡散。ブログには500件以上のコメントが付き、「あなたの勇気に感謝する」「こんな愚行は許されない」「私の会社でも勝者は特権を得ている」などなど、驚きと共感の嵐となった。テレビや新聞などのメディアも取り上げ、「競争に勝ちさえすれば、何でも許されるのか!」と批判された。
UberのCEO、トラビス・カラニック氏は慌てて火消しに奔走し、外部に委託して調査をすると明言した。
その調査の結果、彼女が報告したセクハラは氷山の一角に過ぎないことが明らかになる。
メディアが行った調査でもセクハラやパワハラが横行し、女性の身体を触り、男性を殴っている事例や、ドラッグを使用するマネジャーの存在が確認された。
これらを通して、社内にはカラニック氏と親しい「Aチーム」と呼ばれる人たちがいて、ハイパフォーマーは何をやっても会社に容認されていたことが、明るみになった。社長がお墨付きを与えたハイパフォーマーには、人事部も手を出せず、黙認するしかなかったのである。
さらに、カラニック氏自身の素行も問題になった。
今年3月。カラニック氏がUberのドライバーと、賃金体系について車内で口論している動画をBloombergが公開。
実は、Uberはライバル企業に対抗して運賃を下げ、ドライバーたちの時給は10ドルまで落ち込んでいたのだ。
動画には、カラニック氏の連れが降り、彼が一人になったところで、「賃金が低過ぎてやっていけない」とドライバーが訴える姿が映し出されている。
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