孤独は「個人の問題」としてではなく、医療費の増加、うつ病、自殺問題、高齢化社会への警鐘など「社会の問題」に発展し、孤独な働き手が健康を損ねれば、企業の生産性も下がる。
日本ではいまだに「健康は個人の問題」と捉えられているけど、世界的には「健康は社会の問題」とのパラダイムシフトが数年前から定着していて、世界保健機関(WHO)のヨーロッパ事務局は、1998年に「健康の社会的決定要因:確かな事実」を策定。2003年には第2版を公表し、孤独感が社会や組織に及ぼすリスクを積極的に取り上げている。
日本は「孤独大国」
「おい、また海外の話かい?」
と口を尖らせている人がいるかもしれないけど、日本は言わずと知れた「孤独大国」である。
2005年のOECDによる調査では、日本の社会的孤立の割合はOECD加盟国の中で最も高かった。友だちや同僚たちと過ごすことが「まれ」あるいは「ない」と答えた人の割合は、男性16.7%、女性14%で、OECD 加盟国21カ国中トップ。平均は6.7%なので、いかに高いかがわかる。
また、2007年のユニセフによる子どもの幸福度の調査によると、「あなたは孤独を感じることがありますか?」という質問に対して、「孤独である」と回答した子どもは日本では29.8%。他国の5~7%を大幅に上回っていたのである。
奇しくも先のOECD調査で、平均以下の5%だった英国で今年1月に「孤独担当大臣」が誕生したが、そのきっかけとなったのが「孤独が国家経済に及ぼす影響は年間320億ポンド(約4.9兆円)、雇用主に年間25億ポンドの損失を与える」という科学的エビデンスだ。
英国では「孤独」を感じている人が国民7人に1人いるとされ、65歳以上の高齢者では、およそ10人に3人が「孤独」を感じながら生活。身体障害者の4人に1人は日常的に「孤独」を感じ、子どもを持つ親たちの4分の1が常に、もしくは、しばしば「孤独」を感じているという。
そこで英国政府は、社会的弱者への精神的健康へのサポートの強化、孤独な人々がボランティアグループに参加したり近隣の人と関わる機会の提供、孤独対策のための基金の設立、主要な調査研究で活用するための、孤独に関する適切な指標を国家統計局(ONS)が設定するなどの方針を発表。特にNPO団体が数年前から行なっている、高齢者への電話サービスや、自宅訪問サービスには積極的に予算を投入している。
繰り返すが、孤独は「孤独感」という主観的な感覚であり、経験である。
「社会的つながりが十分ではないという主観的な感情」を健康社会学的な文脈で捉えれば、「私はあたたかく信頼できる人間関係を築いている(=積極的他者関係、positive relationship)」という感覚の欠如だ。
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