「私は自分で、履歴書に"穴をあけた"」

河合:ただ、そうして先送りすることで、足元が揺らぎつつある今の自分を守っているような印象を受けます。組織にそのまま残るにしても、出るという選択をするにしても、今の時代、自分を取り巻く大きな川の流れに漠然と身を委ねていても苦しいだけですよね。もう、終身雇用も年功序列も崩壊しちゃってんですから。

 自分でちょっとでも新たな川の流れをつくっていくためには、自分自身で考える、自分自身で決めていく作業が必要で、私はみなさんにその習慣を身に着けてもらいたくて『「穴あけ」勉強法』という本を書きました。

楠木:拝読しました。気象予報士の資格試験の勉強の際にも使われていたそうですね。

河合:実は、気象予報士を目指して最初に買った参考書は小学生向けのお天気図鑑だったんです(笑)。で、その内容を参考に、自分で穴開け問題を作っていきました。「雨は、□□□から降ってくる」とか。

 私は書くだけでは覚えられなくて…。高校時代からですが、自分で穴を開けて問題を作ることをやり始めたんですよ。

 ポイントは、穴を自分で“あける”ことです。ひっかかりを作り、立ち止まる。立ち止まってみると、わかってる気になっていただけだったことに気付かされる。穴に入るのは一つの答えだけではありません。さまざまな答えがあり得て、それにより思考力が鍛えられます。「そもそも…」と立ち止まり、改めて考え直すことで基礎的な思考力の訓練に役立ち、かつ発想も広がります。

楠木:先日、たまたま大学の授業を受ける機会がありまして、その先生が配布したレジメには、ポイントのある個所が空欄(穴あき)になっていました。その空欄に言葉を埋めながら授業を進めていたのですが、これとは異なるものですか?

河合:穴の開け方にもよると思いますが、基本的には似た考え方だと思います。人間って、穴があれば埋めたくなるんです。例えば「雨は、□□□から降ってくる」と答えに穴をあけると、□□□の答えを必然的に考える。寝る前に5分穴あけ問題を作ればいいだけなので、勉強の習慣化にもつながります。

楠木:なるほど。思考力を鍛え、かつ、考える習慣を身に着けることが、人生において岐路にぶつかった際にも役立つわけですね。

河合:私はCAをやめた時点で、履歴書に"穴をあけた"わけです(笑)。そして、穴に入る答えは、自分で具体的に動くことでしか見つからない。自分で考えなきゃならなかったんです。