自殺の「中年齢化」が進む日本
WHOの報告によれば、2000年以降は自殺者の高齢化が進み、高齢化が進む多くの先進国で「75歳以上の男性」の自殺が増加(Change in the age distribution of cases of suicide)。一方、日本では40代~50代男性の自殺者が多く、これは経済状態の悪い途上国と似通った傾向である。平成28年も「40歳代から60歳代の男性の自殺者で全体の約4割近く」を占め(今回の白書にも記されている。こちら)、年齢別に死因に占める自殺者の割合を比較すると、ご覧の通り30歳前後~50歳前後で男性のほうがずっと多いことがわかる。
要するに、「中高年の男性問題」はかなり深刻なのに、白書ではその点が言及されていない。なぜか日本では「男性問題」より「女性問題」にばかりスポットがあたりがちだが、「自殺」という極めて重要な問題でもなおざりにされてしまったのだ。
確かに全体的な傾向をみれば、自殺者数は減り、中高年の自殺者も減少傾向にある。
だが、先進国である日本が、いまだに経済状態の悪い途上国と似通った傾向を示しているのは なぜか?
自殺者をひとりでも減らすためには、もっと40~60歳代男性が抱える問題を掘り下げる必要があるはずなのだ。
今から3年前の2014年。世界数十カ国の大学・研究機関の研究グループが参加し、共通の調査票で各国国民の意識を調べ相互に比較している国際調査である「世界価値観調査」が、ショッキングな報告をしていた。
近年、男たちが死と向き合うような危険な状況にさらされる事態が激減した欧米諸国では、男性の幸福感が女性と同等になったのに対し、日本ではいまだに女性の方が幸福感が圧倒的に高く、日本の男性の幸福度はイラク、エジプトなど国内紛争や戦争が行われている国々と同じだったのである。
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