「いまだにそんな社長が?」 いるんです、かなりたくさん。

 「いまだにこんな社長いるのか?」と疑う人もいるかもしれない。

 が、「います!」。ええ、想像以上にたくさんいます。経営者を対象にした講演会や懇談会にいくと、必ずといっていいほどいて、その度に唖然とします。

 “いまだ”に「最近の人は本当ヤワになったな」という人はいるし、「メンタルだのなんだのいうけど、新型ウツとかいって、会社を離れると元気になるんだろ? ただ仕事イヤイヤ病でしょ?」と本気で聞いてくる人もいるし、「このご時世、仕事があるなんて嬉しいことだよね?」とのん気なことを言う人もいる。

 いちばん驚いたのは、“公衆衛生の専門家”と自負する教授だった方が、

「やはり本音をいうと、日本人は弱くなったの一言です。学校の朝礼で倒れる学生がいると聞いたときには、驚きました。熱中症が多いのも、アレも弱くなった証拠でしょう」

と、とあるパーティで、堂々と自論を展開したこと。ちなみにこのお方は、御年80歳。背筋もシャキとして、実にお元気で。“日本人やわ話”にいたくご執心のようで、延々とスピーチを続けていた。

 そのときには、100年、そう、100年。長時間労働がなくなるには、あと100年くらい優にかかるかもしれないと絶望的になった。

欠勤・休職よりもっと怖い「プレゼンティズム」

 いずれにしても先の部長職の男性が頭を抱えるように、メンタル不調は拡散する。特に日本ではその傾向が強い。

 日本は欧米にくらべ、

メンタル低下=使えない人
メンタル低下=弱い人
メンタル低下=性格的に問題のある人

といった偏見のまなざしでみられがち。だから、隠す。

 過去12カ月にうつ病にかかったと判断される人のうち、なんと7割もの人が、適切な対処することなく、無理して会社に通い続けていたとの報告もある(Y.Naganuma et al. Twelve-Month Use of Mental Health Services in Four Areas in Japan)。

 「メンタル不全ではないか?」と周りから疑われたくない。「あいつ、うつじゃないか?」と、偏見のメガネ越しに見られたくない。そんな気持ちから不調を隠し、医療機関に相談することさえも躊躇し、一人きりで抱え込んでいる人が多いのである。

 健康状態が悪いにも関わらず出社すると、やる気もでない、ミスが増える、ボ~ッとする、頭の回転が鈍る、などで生産性が落ちる。

 いわゆる「プレゼンティズム(Presentism)」だ。出勤しているが、心身の不調などによりパフォーマンスが低下する状態を指す。

 プレゼンティズムは、欠席や休職を指す「アブセンティズム(Absenteeism)」より、深刻な状況で、企業側の損失も大きい。大企業が負担する従業員の健康関連コストのうち、7割超がプレゼンティズムで、15%が医療費、残りがアブセンティズムと労災と分析するデータもある。また、同僚などへのマイナスの影響も、アブセンティズムより高いと考えられている。

 残念ながらまだ定量的に捉えた調査はない。ただ、イメージしていただければ、なんとなくわかるはずだ。

 休んでいる同僚の仕事をカバーしている場合と、出社している同僚のミスで、突発的に仕事が増える場合。心の準備ができていない分、後者のほうが手間だし、イラつく。単に労働時間が増えるだけじゃなく、心理的にも負の影響が及び、メンタル不全が拡散していってしまうのだ。