いまだ多い、「メンタル不調は個人の問題」教の信者

 そもそもこういった企業が報告する数字には“ウラ”があるので、実際には示される数字以上の、長時間労働を疑ったほうがいい。

 働く人の回答を見ると、数字では見えない実態がわかる。

●「企業は、労働時間を把握する手段を特にとっていない」とした人が、15.0%
●ほぼ毎日「持ち帰り残業がある」としたのは正社員全体の12.4%、非正規10.2%
●年次有給休暇の取得日数「0日」の割合は、正社員で30.3%、非正規45.8%
●「本人の意志に関係なく恒常的に残業がある」とした人が、51.6%

 特に「200~500人の中規模の企業」の数字には、注意が必要だ。これまで私が関わった調査では、このくらいの規模の企業ほど、サービス残業が多い可能性が高かった。従業員のメンタルヘルス対策にも取り組んでいないケースが多く、病気休暇を設けている企業も少ない。

 零細企業だと「顔が見える」人間関係があるので、互いに傘を貸し合うことができる。社員と社長が近く、家族のように大切にできる。

 だが中途半端に人が増えると、互いの顔は見えないわ、きちんとした制度は整っていないわ、マネジメントできるリーダーは少ないわ、の三重苦だ。そこに、「俺がここまで会社を大きくしたんだ」とばかりの「俺さま」オーナーが加わったら……。考えるだけでもゾッとする。俺さまの半端ないパワーは、働く人を想像以上に苦しめる。

 「うちの会社のトップは、メンタル不調は“個人の問題”だと、本心から思ってます。二言目には、『残業してたって、元気なヤツは山ほどいるじゃないか』と、ストレスに強い人を持ち出します。メンタル不調はすべて、個人の資質が原因だと信じて疑わないのです」

 「なので長時間労働が改善するわけもなく、メンタルを低下させる社員が後を絶たない。あきらかに人員不足ですが、トップが認めるわけもなく、どんなに効率化を図ろうとしても限界があります」

 「ウツって……広がっていくんですよ。ひとりが休むと周りがカバーするんですが、もともと抱えている仕事が多いのにさらに仕事が増えて、疲弊していきます。でも、自分が処理しきれないとさらに周りの負担が重くなることがわかっているから、無理して来ちゃうんですよね。本人から『大丈夫です』と言われれば、私もつい任せてしまう。情けないですよね。本当はもっと休ませるべきなのに……」

 「するとやはり本人の生産性が下がってるから、ポカしちゃうわけです。で、余計に手間がかかって。本人はまた落ち込むし、周りもイライラして。人間関係も悪くなる。悪循環です」

 「おそらくうちのトップは、メンタルが何なのかも、残業の何が問題かもわかっていない。『残業しろとは、自分は一言もいったことない』って平気で言いますから……」

 これは社員数が約230名の企業の、部長職の男性が話してくれたことだ。