零細企業より大企業より、中規模企業がアブナイ

 実際、インタビューをしていると、「残業したいのにさせてもらえない」と愚痴をもらす人たちはいるし、本当に残業が必要な人は自宅に持ち帰って“風呂敷残業”する。「残業禁止=サービス残業増加」と本末転倒になる。

 だが、吉越さんは風呂敷残業もしないでいいように、「なぜ、残業をしなければならなかったのか」「どうしたら残業をせずに済むか」を徹底的に考えさせた。

 社員が能動的に残業について考えることの意義、考えて仕事をすることの重要性、仕事以外の時間を大切にすることが仕事にもプラスになること、働くことの楽しさと厳しさ、そして、いい意味で「たかが仕事なんだよ」ということを、吉越さんは社員にわかってほしかったのだろう。

 反省会やレポートは、吉越さんのためにもなったはずだ。“ため”とは失礼な言い方で申し訳ないけど、「おお、こんなことがあったか! よし、ここは体制を変えなきゃだな」なんて具合に、見過ごしていた部分への気付きになったに違いない。残業をなくすには、会社と社員のタッグが必要不可欠。それを見事なまでに成し遂げていたのである。

 一方で、こんな声も聞こえてきそうだ。

 「でも、こういうのって、そもそもが企業に体力がないとできないでしょ? 中小にはムリ」

 確かに。

 実際、件の厚労省の調査「過労死等に関する実態把握のための社会面の調査研究事業」でも、中規模企業の問題が明らかになっている。

 「過労死ライン」と呼ばれる月80時間を超えて残業をした従業員がいる企業 22.7%を、従業員規模別にみると

1位 1000人以上 56.9%
2位 300~500人未満 36.9%
3位 500~1000人未満 37.7%

となっている。

 これだけ見ると大企業の方が問題が深刻に思えるが、現実はそう単純な話ではない。上記はあくまでも、「平成26年度で1カ月の時間外労働が最も長かった月」のデータで、日常的には中小の方が多い。

 例えば、「平成27年度10月の月間時間外労働が80時間以上の従業員が、全従業員の2%以上いる」と回答した割合は、次のようになる(注:年初や年度末、夏期休暇もない10月を対象にしているのは、平均的な月残業時間の把握が目的と推測される)。

1位 300~500人未満 13.1%
2位 500~1000人未満 8.8%
3位 1000人以上 7.8%

 ご覧のとおり、300~500人未満の企業の数値は1000人以上の倍近くになるのである。