結晶性知能を高める方法として、近年、急速に注目されているのが「認知の予備力(Cognitive Reserve)」である。

 これは本を読んだり映画を見たりするなどして言語能力を高め、学校の勉強をし、仕事に主体的に取り組み、仕事以外の活動に積極的に参加することで、平たくいえば、よく学び、よく遊び、よく働くこと。仕事だけじゃダメ、勉強だけでもダメ。体と頭を使い、いろいろな人と交流することが「認知の予備力」につながっていく。

 認知の予備力は、私の専門である健康社会学や組織心理学の「暗黙知(tacit knowledge)」と極めて近く、「難しい相手との交渉」や「部下の心を掴む」など、特定の目標を達成するための手続き的な知識で、単なる仕事に関する知識や一般知識ではない。

 で、こういった経験を繰り返し、「大きな顧客をゲットできたぞ!」「○●君(部下)もずいぶんと成長したな」といった成功体験や、上手くいかなくとも「なるほど。そういうことだったのか!」と失敗から学ぶ体験で、暗黙知は飛躍的に伸びる。

心の定年に甘んじてはダメだ!

 つまり、何だか古くさくて、説教くさいけど「若い時の苦労は買ってでもしろ」ってことが科学的に実証されているのだ。

 「え? オレ、苦労してないかも……」という人は、今からでも遅くない。自分の能力を超えたチャレンジを今のうちにやっておいたほうがいい。

 40代後半で「心の定年」を迎えている場合ではない。腹の出具合や足腰の衰えや、増えた白髪や広くなった額を気にするだけじゃなく、今のうちから「認知の予備力」を高める努力もやるしかない。

 現状に甘んじている人の「未来の価値」は残念ながら低く、カラダ“だけ”が若いという、厄介な存在に成り下がってしまうのである

 と同時に、企業も「動けば動くほど周りの負担を増やす」やっかいなオッさんを量産しないためには「経験信仰」に頼るのではなく、「認知の予備力」を蓄える働かせ方を模索し、長期的目線で「高齢者(イヤな言葉ですけど)雇用」を捉えることが肝心なのだ。