いや、もちろんベテラン社員が若い人より稼ぎが悪いとか、50歳以上を雇用し続けることで企業の生産性が低下するといった証拠はないし、私自身「年齢を重ねることで得る経験や知識」はどんなに若手にお金を投資しようとも得られない企業の資産だと断言してきたので、「業績の向上につながる」と信じている。
だが、「ああ、自分たちの時代は終ったなぁ」と感じることも少なくないので、ちょっとばかり心配なのだ。
どんなに社員の長期雇用のメリットのひとつに、「彼ら彼女らに付いた顧客のロイヤリティーが向上することがある」とさまざまな研究から確かめられていて、担当者の変更は高齢者ほど嫌うばかりか、“乗り換え”の機会にもなりがちであるとしても、「オッさんたちがニッポンの希望だ!」ともっともっと強くアピールして、オッさん、オバさんたちと一緒に私もがんばりたい。
そこで今回は、「オッさんの価値」というテーマでアレコレ考えてみようと思う。
まずは「体力」について、「あ~やっぱりね~」という調査結果から紹介する。
東京都老人総合研究所が1992年と2002年に、約4000人を対象にふだんの歩行スピードを調べ、比較した結果がある(「日本人高齢者における身体機能の縦断的・横断的変化に関する研究―高齢者は若返っているか?―」)。
「歩行スピード」は年齢と共に低下するため、身体機能のレベルの総合的な測定に多く用いられるのだが、ごらんのとおり1992年から劇的に伸びていることがわかる。
1992年の64歳の歩行スピードは、2002年の75歳とほぼ同じ。
つまり、10年前にくらべ11歳も身体機能が若く、70歳は59歳、60歳は49歳。
身体的には、60歳定年はおろか65歳定年でも早過ぎる。
っというか、こんなにカラダが元気な人たちを、職場で放し飼いにしておくのはもったいないとしか言いようがない。
身体だけでなく、アタマも意外に劣化しない
「でもさ~、カラダだけ元気ってのが案外、部下には困るといかウザいというか……」
はい、そのお気持ちよ~くわかります。でも、安心してください。
なんと「日常問題を解決する能力や言語(語彙)能力は、年齢とともに磨かれ、向上している」ということが、いくつもの調査で確かめられているのである。
そもそも人間の知能は「流動性知能」と「結晶性知能」の2つの側面に分かれる。
流動性知能とは、「新しいことを学んだり、新しい環境へ適応したり、情報処理を効率的に行ったりするための問題解決能力」で、記憶力や暗記力、集中力などを指す。
結晶性知能とは、「学校で学んだことをや日常生活や仕事などを通じて積まれた知識や経験を生かした応用する能力」で、いわゆる経験知や判断力だ。
かねてから「身体能力のピークは20代であるのに対し、知力は発達し続ける」とされていたのだが、近年、経年データを使った分析(縦断研究)が行われるようになり、「どちらの能力も、60歳代前半までは大きく低下しない」ことがわかった。
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