企業側の「政府の賃金引き上げの要請への認知」と、企業の「賃金引き上げの行動」との関連を、国土交通省と中小企業庁が、建設工事における下請取引の適正化を図ることを目的に実施している「下請取引実態調査」(平成26年度)のデータを使い、詳細に分析しているのだ。
国土交通省は業界団体に適正な賃金水準の確保の要請を行っており、その取り組みを周知するためのポスターを作成、配布している(平成25年度の要請およびポスターはこちらとこちら)。
そこで「政府の賃金引き上げの要請への認知」を、
- 国交省の要請を知っているか?
- 周知ポスターを知っているか?
- 周知ポスターを見たことがあるか?
などの設問から、認知度を算出。
一方、「下請取引実態調査」には、
- 企業の立場(元請け、一次下請け、二次下請け、三次下請け、四次下請け)
- 下請契約の際の相手企業とのやりとりの設問
- 消費税の転嫁に関する状況
- 建設技能労働者への賃金支払い状況
- 社会保険の加入状況
などの問いに加え、次の「賃金の引き上げ」に関して、5つ選択肢が設けられている。
- 基本給や毎月の手当など、毎月の給与を引き上げた(予定含む)
- ボーナスや一時金など、不定期の給与を増やした(予定含む)
- その他の給与を増やした(予定含む)
- 賃金水準を引き上げていない、今後も引き上げる予定はない
- 賃金水準を引き上げた(予定含む)
これらに「企業を取り巻く地域の経済環境」なども考慮した上で詳細に分析。その結果、政府の要請を認知している企業ほど賃金を引き上げていることがわかった。
さらに、経営面で余力に乏しい小規模な企業のみを対象とした場合も、同じ結果が得られた。
親だけでなく、子の意識改革も
さて、この結果をどう読み解けばいいのか?
もともと「若者を確保したい」とか、「厳しい労働環境に置かれている労働者の離職を防ぎたい」とか、「人手不足を解消したい」といった理由で、「賃金を上げたい」と考えていたトップほど、政府の動きやポスターに目がいった可能性もある。
だが、いずれにしても“親”の意識だけではなく、“子”の意識改革を行うことも必要で。そのためにも「オレたちだけ叩かないいでくれよ」という不公平感を払拭する、ブラック企業の公開方法を議論する価値は大いにあるのではないだろうか。
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