「ですから新製品を開発するのは大変でしたけど、社員のモチベーションもあがったし、何よりも会社としては大口契約だったのでありがたかった。

 ところが数年前に『会社の方針で他の製品は買わない』と宣言されてから、状況は一変しました。

 新商品プレゼンの頻度があがり、単価も下げられた。納期までの期日も短縮されました。従業員の賃金はいっこうに上がらず、発注先との差は増々広がってしまいました。

 ただ、すべて買い取りなので返品はありませんし、問題がおきたときは彼らがすべて対応します。なので、ウチはまだ恵まれているのかもしれません」

新製品ラッシュの影に聞こえる悲鳴

 「下請けによっては返品もあるってことですか?」(河合)

 「あります。そっちの方が多いかもしれません。まぁ、恵まれているといっても、ウチも長時間労働は常態化しています。社員も高齢化していて、若い人が必要なのに、こんな労働環境じゃダメですよね。

 本当は無理難題を押し付ける業者とは取引しなきゃいいのかもしれませんけど、選り好みしてたらつぶれちゃいます。結局、大きくて体力ある企業だけが勝ち続け、小さいところはどんどんと疲弊していく構造になってるんです。どうにかしなきゃなんですけど、厳しい。本当に厳しいんです」

 ちなみにこの男性は50代、社長は70歳で、従業員はすべて正社員だという。

 「ああ~そうなんですか~。オタクの会社で作ってるんですか~」。
 私はこれまで何度、このフレーズを口にしてきただろうか。

 講演会で、フィールドインタビューで、中間管理職や経営者の方たちとの会合で……。
 おどろくほど私たちの周りには、下請け、孫請けの小さな会社が作った製品が散在する。

 コンビニやスーパーにいくと、「これでもか!」というくらい新商品が溢れ、お正月、節分、バレンタイン、ホワイトデー、サクラ、新学期、ゴールデンウィーク、梅雨、初夏、盛夏、夏休み、中秋の名月、ハロウィーン、クリスマス etc etc……と、実に短いスパンで店の棚の商品が入れ替わる。

 確かに「新商品」というフレーズは魅力的だ。
 だが、果たして消費者はここまで「新商品」を求めているのだろうか。

 そもそも人は選択肢の数が多いと、逆に消費から遠のくことはマーケティングの知識がある人ならわかっているはずなのに……。なぜ、ここまで商品を増やし、サイクルを短くするのか?

 ひょっとして不安から逃れるために「新商品を作らずにはいられない症候群」みたいなものが、発注元の企業に広まっているのでは? と思ったりもする。

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