いわゆる“ブラック企業”が、ついに公開された。

 先週の水曜日(5月10日)、労働基準法令に違反したとしてこの半年間に書類送検した全国334件の社名を、厚労省がHPに掲載したのだ(こちら)。

 厚労省の担当者によれば、

 「昨年末に発表した『過労死等ゼロ』緊急対策の一環で、一覧表にすることで社会に警鐘を鳴らす狙いがある」

 のだと言う。

 「おお、遂に!」と、早速一覧表を見た瞬間……
 「こ、これは……、だ、大丈夫なのだろうか?」と戸惑った。

 334件の中には、高橋まつりさんが過労自殺した「電通」の社名もあったが、明らかに「下請け」と思しき企業名がわんさか載っているではないか! というかおそらくほとんどが、体力のない下請け企業であることは間違いない。HPが存在しない企業も多く、愛知、大阪、福岡などに集中しているのも気になった。

 つまり、

 「発注元はどこ? 買いたたかれて無理したのでは?? 支払いされてる??? ここに掲載されたことがきっかけで、つぶれちゃう企業もあるのでは????」

 と、心配になってしまったのである。

新たな犠牲者が生まれる構造

 もちろんいかなる理由であれ、違法は違法だ。

 賃金はきちんと払わなきゃだし、労働者の安全対策を徹底しなきゃだし、違法な長時間労働はもってのほか。外国人技能実習生だろうとなんだろうと、最低賃金の原則はきちんと守らなくてはならない。

 だが、どうも釈然としないのです。もっと構造的な問題まで切り込まないと。これでは末端の業者叩きでしかなく、違う意味での新たな“犠牲者”を生み出すことになりかねない。

 そこで、今回は「下請けの今」についてアレコレ考えてみようと思う。

 数年前、ある団体の講演会に呼ばれ、その後の懇親会に参加したときのこと。
 「○○(某商品名)をご存知ですか?」と、名刺交換にいらした方に聞かれたことがあった。

 「はい、知ってますよ!」と答えると、
 「アレ、うちの会社でつくっているんですよ」と。

 「ああ、そうなんですか~。▲△(某企業)が作ってるんじゃないんですね?」と聞いたところ、「開発は下請けがやっているんです」と笑顔で答え、以下のような話をしてくれた。

 「最初の頃は結構、良かったんです。単価は決して高くありませんでしたけど、うちの会社の他の製品も買ってくれるという条件だった。それに大企業さんが、ウチみたいな小さな会社に頭下げて『開発をお願いしたい』なんていうわけですから、そりゃあうれしいですよね」

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