さらに、「今の日本社会にはアンダークラスという新しい階級を含む、五階級構造を持つ」とし、「資本家階級・新中間階級・正規労働者・アンダークラス(非正規労働者)・旧中間階級」に分類している。
今回、問題にしている新中間階級のプロフィールは以下のとおりだ(橋本氏の分析による)。
- 就業人口の20.6%を占める
- 平均年収は499万円
- 世帯平均年収は798万円
- 配偶者あり79.4%(男性)、68.2%(女性)
恵まれた家庭環境に育った新中間階級出身者
また、高等教育を受けた人の比率が61.4%と際立って高く、週平均労働時間は43.4時間で資本家階級(45.1時間)より短く、貧困率は2.6%でこれも資本家階級(4.2%)より低く、パソコンなどの情報機器の所有率も資本家階級を上回る。
さらに、仕事や生活に対する満足感は、資本家階級に次いで高く、自分を「人並み以上」と考える人は42.8%。資本家階級の56.2%より低いが、他の階級よりかなり高い。自分は幸せだと考える比率も64.1%と高くなっている。
これらの結果を受け、
「新中間階級は教育水準が高く、情報機器を使いこなし、収入も多く、豊かな生活をし、明らかに恵まれた人々」
と橋本氏は指摘している。
また、橋本氏は2015年時点で35歳から54歳までの人々を、1960年代生まれのバブル期に就職した「45歳~54歳」と、70年代生まれの就職氷河期世代の「35歳~44歳」に分けて、出身階級(育った家庭・親の階級)との関連も分析している。
新中間階級出身者のうち、
- 60年代生まれ世代は47.9%が初職時から新中間階級
- 70年代生まれ世代は39.5%に低下し、アンダークラスが6.7%から12.9%と2倍近く増加
- 管理職への昇進により新中間階級へ移動した人は、60年代生まれでは66.9%に対し、70年代生まれは49.7%と激減
また進学率なども含めた分析及び、憶測も含むとしながらも、現在の新中間階級の人々にこう苦言を呈している。
「新中間階級出身者たちはもともと進学率が高く、当たり前のように大学に進学した。そして、あたり前のように新中間階級になることができた。しかし、それは恵まれた家庭環境に育ったからであって、特に彼らがもともと能力的に優れていたからではない」
……なんとも。
今までもバブル世代は不良債権だの、時代が良かっただけで高い身分を得ただのいわれてきたし、私自身公言していた。だが、こうやって出身家庭との関連なども含めたファクトを突きつけられると、凹む。逃げ場がないというか、なんというか。
さらに、猛烈な一打となったのが、新中間階級の人々の「格差に対する意識」だ。
「日本では以前と比べ、貧困層が増えている」との問いに、新中間階級を含めたほとんどの階級では6割強が「イエス」としているの対し、資本家階級では5割弱。
一方、「いまの日本では収入の格差が大きすぎる」との問いに対し、新中間階級と資本家階級の約3割が「そう思わない」と回答した(他の階級では15%前後)。
また、新中間階級は、所得再分配を支持しない傾向も強いこともわかった。
つまり、著書で橋本氏が指摘しているとおり、新中間階級の人たちは冷静に格差が拡大し、貧困層が増えているという客観的事実は認める。しかしながら、この格差を「大きすぎる」という価値観はないことに加え、自分の稼ぎを社会に還元したいとも考えていない。
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