メンタルの労災申請が最も多いのは製造業

 裁量権がない、仕事の要求度が高い、能力に対して報酬が低い――。

 冷たいストレスの雨が降り続くだけ。雲の切れ間から元気になる光も差しこまない。がんばってもがんばっても報われない。そんな悲惨な世界に閉じ込められながらも、2000年代の技術者たちは必死で踏ん張っていた。

 で、今。企業間格差が生まれている。異常に気付いた会社は現場に光を当て、異常が常態化した会社では、現場の人たちの生きる力が萎えた。

 2014年度に精神疾患を理由に労災申請した人数(1456人)、支給決定件数(497件)は共に過去最多で、業種別では、「製造業」 が請求件数・支払決定件数ともにトップだったと報告されているのだ。

 三菱自動車の偽装問題では、会見の翌日、日本テレビの取材で「本社から子会社に不正の指示があった」との報告書をまとめていたことがわかったと報じられた。

 報告書には、「発売時に燃費が一番でなくてはならない」と、2012年の会議の席で当時の開発本部長が発言し、子会社の管理職は、「過去の経験から目標達成は厳しいと認識し、再三の目標の引き上げに疑問を持っていた」と語ったと記されているという。

 2013年5月にeKワゴンの開発秘話がテレビ放送されたとき、三菱自動車技術センターで開発責任者の方は、「何とか目標燃費のリッター29kmに届きたい」と語り、最後の最後でその目標を達成した瞬間が映し出されていたけど、あのときあの現場にいた“技術者”の方たちは、どんな思いだったのだろう。

 

「(不正を行った従業員は)軽い気持ちで出したんじゃないか」
「心根が悪いわけではない」
「燃費不正問題は、愛社精神が少し行き過ぎた程度の問題」
「燃費なんていうのは、営業トークのようにちょっと良く見せるようなもの」
「購入者で文句を言っている人はいない」
「そもそも燃費なんてみんな気にして乗っていない」

 三菱グループの帝王と呼ばれ、三菱自動車の相川哲郎社長の父でもある三菱重工相談役の相川賢太郎氏は週刊新潮の取材に、こんな放言を連発したが、帝王はいったいどんな声を聞いていたのだろうか。

 現社長の相川哲郎氏は、「ギャランΣがかっこよく思えた」から三菱自動車に入社し、エリート街道をまっしぐらに進んできた生え抜きの社長だが、彼は“現場”の人たちの声にならない空気を、きちんと感じとっていたのだろうか?

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