急速に低下する技術者の「やりがい」と「忠誠心」

 2011年に日本労働研究雑誌に寄稿された、「日本の技術者──技術者を取り巻く環境にどの様な変化が起こり、その中で彼らはどの様に変わったのか」(同志社大学教授中田喜文氏、同大学特別研究員宮﨑悟氏)というタイトルの論文には、1980年代から2000年代初頭までの現場の変化が詳細に分析されている(以下、抜粋)。

・自動車製造業に従事する技術者の数は、1995年をピークに減少傾向にある。

・米国では自動車製造業に従事している働く人たちのうち、技術者が占める割合は10.1%。一方、日本では約半分の5.4%。

・技術者の質(技術者1000人当たりの生産性)を、特許数を指標に日米で比較すると、1990年代中盤以降も日本の特許数は着実に上昇を続け、米国の水準を遥かに凌駕する高さを誇っている。


注:ここでの「技術者」は建築及び情報処理技術者をのぞく。特許数は延出願数、延登録数、実質出願数の3指標。

・技術力の高さが経済価値の創出につながっているかを、GDP10億ドル当たりの延出願数(世界各地の国で出願・審査が完了し、登録された数)で見ると、日本の特許は米国の5分の1~6分の1の経済価値しか生み出していない低さだった。

・技術者の「仕事へのやりがい」と「企業への忠誠心」を1994年と2005年で比較すると、どちらも急速に低下していた。

 これらの結果をかなりシンプルかつ乱暴にまとめると、

「日本の製造業って、技術者はめちゃくちゃ少ないんだけど、少数精鋭でメチャクチャ頑張ってる! 特許もたくさん取った! なのにさぁ~経営陣がそれを十分に生かしてないってどうよ? こんな職場で、やりがいも忠誠心もあったもんじゃないっしょ?」

ってことだ。

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