残念ながらその答えはわからない。
 だが、坪内氏が「人の力」を信じる気持ちが、3000人もの受刑者の「再入率」は6.9%という数字に反映されているのではないか。
 再入率の低さは「模範囚だけが収容されていることによる」との指摘もあるが、刑務官や関係者に意見を聞くと、「それを加味しても低い。一般の人たちに交じって就業経験する意義は大きい」と口をそろえる。

物理的な壁をなくすことが、心の壁をなくす

 塀のない刑務所とは、「自分で決められる自由」があるとき、人は自主的に行動するという信念に基づいた刑務所。どんなに信頼しても裏切り、恩を仇で返すような人がいるかもしれない。それでも物理的な壁をなくすことが、心の壁をなくすと、坪内氏、刑務官、支援者、そして地域の人たちが信じ、その信念への答えが段ボールに詰まっているのだ。

 「刑務所は社会の縮図」と、刑務官たちは言う。監視と管理を進めようとする今回の動きは、私たちの社会の動きそのものなのでは? と思ったりもする。

 それを考える上で参考になる、ある企業を、最後に紹介する。
「ebm パプスト社」。従業員1万4000人が働く、ドイツ南部の工業用通気システムを製造する世界的企業だ。

 パプスト社は、「一日いつでも、最低4時間だけ出社すれば、あとの労働時間は好きにふりわけていい」という夢のような労働条件で、生産性を上げた。
 今から4年前、人手不足に悩んでいたパプスト社は、「働き方を変えよう。出社から、結果の文化に変えよう。若い世代を呼び込むには、もっと自由が必要だ」と、シフト制を廃止。一日のうち最低4時間出社していれば、日中の労働時間は好きなように振り分け、残業した場合は「時間口座」に貯めることができるようにしたのだ(時間口座は、働く人たちは必要なとき自分の口座から残業時間をおろし、有給休暇として使うことができる制度)。

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