私は家族と一緒だったが、梅子は単身。私の経験と比べものにならないくらい大変なことがあったこはずだ。まだまだ親離れできない年齢。日本とはまったく違う言語、まったく違う文化の土地で、梅子は笑顔になった回数以上に涙した経験があったに違いない。
 ただ、子どもはしんどさを大人のように口にしない、というかできない。私自身がそうだったから。そして、それを乗り越える強さを人間は持っていて、乗り越えられた時に、「変革の担い手」になれるのだと、私は確信している。

ブルナー博士の「知覚とは習慣による解釈」

 「心(mind)は、人間の文化(culture)の使用によって構成され、文化の使用において現実化する。 人間は文化に影響をうけながら、意味づけを行う」(J. Bruner . The Culture of Education, Harvard University Press , 1996)。

 これは1990年に文化心理学という新しい 学問を提唱した、米国の教育心理学者J.S.ブルナー博士の言葉である。ブルナーは認知心理学の産みの親であり、文化心理学の育ての親で、「人の知覚」に関する研究に生涯を捧げた。

 心理学における「知覚」とは、「外界からの刺激に意味付けをするまでの過程」のこと。例えば熱いお茶を飲んだ時に、皮膚が「温度が高い」という情報を受け取り、それに対して「熱い」という意味づけを行うまでの過程が知覚だ。

 しかしながら、同じ80度のお茶を飲んでも、その「熱さ」の感じ方は人それぞれ。猫舌なんて言葉があるのもそのためである。

 そのときの状況によっても「知覚」は変わる。
 いわゆる「慣れ」。人の適応する力が時に私たちの五感を狂わせる。ブルナー博士が「知覚とは習慣(=文化)による解釈」と指摘するように、どっぷりとそこでの“当たり前”に染まっていくのだ。

 集団(=企業)に属する年数が長ければ長いほど、年齢を重れば重ねるほど、自分のコンフォートゾーンから抜け出すのが億劫になる。
 そして、自分の価値=所属する会社や肩書きと勘違いし、それが自分の可能性を狭めていることにも気づかない。
 もっと学び、もっと外に出て、もうひとふんばり汗をかき、涙し、自分さえ限界をひかなければ可能性は無限大に広がっていくのに、それができなってしまうのである。

 そんな人たちが「自分以外の誰かのために、広く社会のために」など考えられるわけがない。

 私は私を知っているか?
 私は変革を担っているか?

 あなたはどうですか?

『他人をバカにしたがる男たち』
発売から半年経っても、まだまだ売れ続けています! しぶとい人気の「ジジイの壁」

他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)

《今週のイチ推し(アサヒ芸能)》江上剛氏

 本書は日本の希望となる「ジジイ」になるにはどうすればよいか、を多くの事例を交えながら指南してくれる。組織の「ジジイ」化に悩む人は本書を読めば、目からうろこが落ちること請け合いだ。

 特に〈女をバカにする男たち〉の章は本書の白眉ではないか。「組織内で女性が活躍できないのは、男性がエンビー型嫉妬に囚われているから」と説く。これは男対女に限ったことではない。社内いじめ、ヘイトスピーチ、格差社会や貧困問題なども、多くの人がエンビー型嫉妬のワナに落ちてるからではないかと考え込んでしまった。

 気軽に読めるが、学術書並みに深い内容を秘めている。

悩める40代~50代のためのメルマガ「デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』」(毎週水曜日配信・月額500円初月無料!)を創刊しました!どんな質問でも絶対に回答するQ&A、健康社会学のSOC概念など、知と恥の情報満載です。