今回は「この衝撃動画に潜む真の問題」について考えてみようと思う。

 はい、アレです。先週、世界中を震撼させたユナイテッド航空の“オーバーブッキング事件”です。
 ご存知のとおり、発端はひとりの乗客のTwitterだった。

 一瞬、何が起こっているのか理解不能な衝撃的な画像と、オーバーブッキングという一般にあまり使うことのない言葉(航空関係者にとっては日常)、マッチョな警官、流血しているアジア系の乗客、周りの悲鳴……。

 これだけで、突っ込みどころ満載なのだが、実際に現場で起きていたことを細かく調べていくと、この“事件”に関わった現場の人たちが「規定どおりにやっただけだよ!」と口を尖らせている様子が目に浮かんだ。

 男性を引きずり出した係官でさえ、「なんで? 俺が悪いの? 俺は乗客を降ろせというのがミッションだったからやっただけだよ」と。「確かに、暴力をふるっていいなんて規定はないけど……。あの場ではああするしかなかったじゃん」と内心思っているかもしれないのだ。

 もちろんいかなる場合も、あの通路の引きずり方はひどいし、あんなことが許されるとは到底思えない。なので擁護する気はない。

 だが、「規定」という決めごと、予測できない人の「感情」、切迫した「時間」が掛け合わさったとき、当人たちに悪意がなくても、にわかに信じ難い“事件”が起こってしまうのだ。

 改めて見直すと「うん、それは確かに規定通りかもしれないね。でも、ああ、ここで臨機応変に対応していれば……」と思う残念なことがいくつもあり、“現場力”の大切さを痛感した次第だ。

事態の進行を追ってみよう

 というわけで、「規定」を交えつつ、まずは「いったい何が起きたのか?」を時系列で整理します。

 “事件”が起きたのは4月9日(現地時間)。シカゴのオヘア国際空港発、ケンタッキー州ルイビル行きのユナイテッド航空3411便の機内だった。

 運航していたのはユナイテッド航空ではなく、提携先のリパブリック・エアウェイズ。機材もリパブリック、クルーもリパブリックの社員である。

 予定では午後5時40分に出発し、午後8時7分に到着するはずだった。ところが、トラブルが起きたことで、出発は約2時間半ほど遅れ、実際には午後8時2分に空港を発ち、目的地ルイビルには午後9時53分に着陸している。

 事件の発端は、出発直前にユナイテッド航空から入った、
 「4人の乗務員が業務上の理由により、客室に搭乗(デッドヘッド)することになった」
 との連絡である。

 しかしながら、3411便は満席。現場は、4人を乗せるためには「乗客4人を降ろす」必要があると判断した。

 そこで「オーバーブッキング時の規定」に従って、クルーは業務を遂行する。

 最初に乗客には、後のフライトに移ってもらうのと引き換えに「400ドル(約4万4000円)とその夜のホテル宿泊、翌日午後のフライト」が提示された。

 が、機内の乗客が誰も手を挙げなかったので、これまた規定に従い提示額を800ドルに倍増した。……それでも誰も応じなかった。そりゃそうだ。だって既に乗っているのだ。気分はとっくに到着地に向っているのに、ここで提示を受け入れるのは、よほど時間的余裕のある人しかいないはずだ。

 そこでユナイテッド(この場合はリパブリック・エアウェイズ)のマネージャーが機内に乗り込み、
 「オーバーブッキングの規定により、降りる乗客4人をユナイテッド側が選びます」
 と告げたのである。