つまり、この実験は「悪しきシステムが善良な人を変えてしまう」という教訓を示唆し、「その地位に求められる潜在能力なき人が、地位が持つ支配する力だけを手に入れた時」の恐ろしさを教えてくれたのだ。

 「支配する力」ほど、人を狂わす恐ろしい“武器”はない。そもそも潜在能力を持つ人は、他者を支配する力など持たなくても、他者に影響力を及ぼすことができる。

 これを実証したのが、米コロンビア大学で行われた実験である。

 この実験では、互いに面識のない人たちを集め、ある課題の解決策を議論してもらった。被験者たちは最初に、各々が個人的に「解決策」をいくつか練り、その後、グループディスカッションを行い、グループとしての「回答」を決めてもらった。

 話し合い終了後、参加者たちに「メンバー1人ずつの評価」を依頼。評価は2つの軸に分けた。一つ目が「支配する力」に関するもので、その人が「強引だったか?」「恐ろしかったか?」「高圧的だったか?」など。二つ目は「潜在能力」に関するもので、その人の「能力は高いと思うか?」「傾聴に値する人物だったか?」「尊敬できるか?」などを、それぞれ評価してもらったのだ。

 その結果、「支配する力」の高い人ほど影響力が高く、メンバーたちが彼の意見に従っていたことが分かった。そして、それと同等の影響力が「潜在能力」の高い人にもあることがわかった。メンバーたちは、「潜在能力」が高い人に魅かれ、好意を抱いていた。一方、「支配する力」の高い人の意見には同調はするけど、その「人」のことを嫌っていることもわかったのである。

資質なきリーダーほど人を見下すようになる

 この実験では、どうやって「支配する力」の高い人たちがメンバーを従わせたのかは把握できていない。脅したのかもしれないし、アメをぶら下げたのかもしれないし、強引に自分の意見を押し通したのかもしれない。だが1つだけ明らかなのは、能力の有無に関係なく「支配する力」は機能するということ。でもって、潜在能力の高い人は「支配する力」を外部から与えられなくとも、周りに影響力を与えることが可能、ということだ。

 「支配する力」という言葉にはネガティブな印象を受ける。だが、2つの心理実験が教えてくれるのは、問題は「個人」の潜在能力で、その能力がない人=資質なき人がリーダーになったとき、組織のメンバーの満足感は低下し、モチベーションも下がり、投げやりになる、という事実だ。

 メンバーは考えるのを止め、言われたことに従い、リーダーはますます横暴な態度で人を見下していく。どんなに間違った方向に向かっても決して修正されることなく、気がついたときには無責任な結末に終わる危険性が高まっていく。

 このリスクを防げるのはただ1人。リーダーを任命する人だ。すなわちトップの資質が極めて重要なのだ。

 そのポジションに求められる能力はナニか?
 その能力を有しているのは誰か?
 大臣という地位に必要な資質はナニか?
 復興大臣に求められる資質とはナニか?
 それをきちんと考え、見抜く力。その資質をトップは持っているのか?

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