「ひまつぶし」に働いて“立派”になった世代の困惑

 なんだか、話を聞いていて申し訳なくなった。新人と40代の問題行動の板挟みにされているだなんて。本当、申し訳ない。

 と同時に、彼らの「立派さ」に感動した。

 30歳前後といえば団塊世代の穴埋めが必要な時期に、売り手市場の下で入社した世代だ(2007年~2009年卒)。ブラック企業やシューカツという言葉もない時代で、新卒一括採用、エントリーシート、といった、就活の制度がいろいろと問題視され始めたのも、彼らの後。

 自分のコラムをふりかえってみるとそのときどきの社会問題がわかるのだが、……2009年に彼らの世代を取り上げたコラムのタイトルは……、「会社はひまつぶし?」だ―――。

「出世したがらない」
「常に受け身である」
「二言目には、なぜ僕は評価してもらえないんですか? と言う」

 こんな若手社員に、上司たちが困惑していたといわれる時代で、そんな彼らの「働く理由」が「ひまつぶし」だったのである。

 ひまつぶして働いて、こんなに立派になったなんて……。なんとも感慨深い話だ。

 どんな仕事にも責任があること、少々理不尽なことでも折り合いをつけなきゃいけないときもあること、……そんな大人の明文化されることのないルールを、彼らはしっかり身につけた。

 と同時に、このコラムを書いたときの自分の“青さ”も痛感している。今なら「ひまつぶし? いいんじゃね?」と素直に思えるのに、アノ頃は思えなかった。お恥ずかしい限りだ。

 自分だってCA(キャビンアテンダント)をやっていたときには、「ひまつぶし」に近いモノがあったのに。そんな自分をさらけ出すのが恥ずかしかったか、その余裕がなかったのか、あるいは、「ひまつぶし」と堂々と言い放つ彼らにただただ驚愕してしまったのか、今となってはよくわからない。

 まぁ、私の未熟さは今後の糧にするとして(どこまでもポジティブ!)、30歳前後はキャリアの初期ステージから中期への移行期。

 実際に社会でキャリアを重ね、仕事を自分の生活の一部として経験する中で、「本当に自分のやりたい仕事、自分に合った仕事はいったい何だろう?」と迷うようになる。そして、生涯自分が関わっていく仕事を計画、開発する時期に、キャリア・アンカーを模索する、大切な節目だ。

新人の珍行動に透けて見える問題の本質

 新人クンたちの珍行動、追従する40代、下の問題行動を見て見ぬ振りをする上司たち……。新人から上司まで、無責任な人たちの間に挟まれ苦悩する彼らの今後は大丈夫だろうか。前向きな気持ちが萎えないか? 仕事を抱え込み過ぎて折れやしないか? 彼らの話を聞いていて、正直、心配になった。

 その一方で、新人クンたちの珍行動は、実は物事の本質を捉えているように思う。

 なぜ、40代が若者の珍行動を真似るのか? 彼らも若者たちと同じように、定時に帰りたいし、無駄な会議をダラダラ続けたくない、残業のための残業はしたくない――。ただ、それだけじゃないのか? ずっとそう思っていたけど、「仕方がない」と我慢していた。そう考えることはできないだろうか?

 いつも、学生たちと話していると、その「クリアなまなざし」に感心する。そうなのだ。「若者の問題」とされていることの中には、「オトナたちの問題」が潜んでいる。「仕事とプライベートに線を引きたがる」ことが問題なわけではない。「仕事とプライベートに線を引かない」働き方が、当たり前になっていることが問題なのだ。

 奇しくも、先日、あるTwitterが拡散され話題になった。

卒業式を済ませた大学生の酔っぱらい集団が、「来月から毎日8時間も働くとかありえねぇよなー!!」と車内でバカ騒ぎしていらっしゃる。
8時間で済むとか、仰る通りあり得ないので安心してください。

 これが拡散されるや否や、瞬く間に賛同の声がわき起こった。

「8時間ですむわけがない」
「8時間なら14時退社になる」
「通勤時間まで入れたらほぼ仕事時間だけで終わる」
「1.5倍は働くことになると思え!」

などなど、「残業あり=ノーマル」という意見が相次ぎ、

「一億総社畜かよ?」

という嘆きも同時に広まったのである。

 これだけ長時間労働が社会問題化し、それブラックだ、やれ取り締まりだ、と連日のように残業ネタが新聞の片隅に載っているのに、「8時間労働は夢?」と諦めている人々が多かったのである。

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