男性保育士が「寿退職」するのも当たり前

 「これじゃ結婚もできない」と男性は嘆いていたが、実際、私立の保育園では、「これでは家族を養えない」と結婚を機に「寿退職」する男性保育士が多いとされている。

 例えば、私立の保育士の平均月給は約21万円。一方、公立保育士は30万円程度となる。初任給はほぼ同じだが、公立は地方公務員になるので年功序列が適用され、40代では10万円程度、50代では2倍近くに給与差は拡大する。

 おそらくこういった賃金の差が関係しているのだろう。公立に勤める保育士の平均年齢は37歳だが、私立は31歳と若く、30 歳以下の保育士が半数以上の57%を占める。

*上記のデータは、内閣府国民生活局物価政策課に設置された「保育サービス価格に関する研究会」の報告書より抜粋

 「だったら、公立の保育園をもっと増やせばいいのでは?」。そう思われる方もいるかもしれない。

 残念ながら、保育園もその他の業種同様に民営化が進められているので、公立の保育園の“チケット”はプレミア級。この先、公立は次第に減り、保育士の待遇は私立が基準になっていくと考えられるのである。

 奇しくも、民主、共産、維新、生活、社民の5野党が、保育施設で働く保育士や事務員に加え、幼稚園の教諭らの賃金も平均で1人につき、月5万円引き上げる保育士処遇改善法案を衆院に提出した。対する与党案は「4%増」。月額わずか8000円程度だ。

 当然ながら賃金の問題は男性だけの問題ではない。しかしながら、非正規の賃金の低さは、「男性が結婚しない(できない)理由」に挙げられるのに、保育士(介護士も)に対してはそれほど問題視されない。たとえ男性保育士が保育士全体の5%程度とマイノリティだとしても、人材不足だの少子化だのアレコレ騒ぐのであれば、全産業との差=11万円を基準に議論されないのは、おかしな話だ

賃金だけの問題ではない

 それにたとえ賃金が多少上がったとしても、

 「保育士の仕事ってキャリアの展望が見ない」

 という件の男性のこの一言は、今後の保育士のあり方を考える上で極めて重要である。

 働いていれば誰だって自分の能力を高めたいし、誰だって成長したい。

・もっと自分の能力が発揮できる仕事がしたい
・もっと他人から認められる仕事がしたい
・もっと稼げる仕事がしたい

と、年を重ねれば重ねるほど、成長欲求は高まっていく。

 キャリアパスが見えなければ、「こんなことをしていて、将来はあるのだろうか」と、再び暗闇の中に追い込まれる。

 今就いている仕事が持続可能で、その仕事とともに自己も成長できる状況に置かれて初めて、自立心と自尊心が高まり、自分の足でしっかり歩こうという気持ちが喚起される。

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