「ええ、転職して良かったです。全く後悔してません」

 「それまでは転職とか一切考えたことがなかったんですが、なんとなく考えるようになりました。ひとつ不安になるといろんなことが不安になってきて。保育士の仕事ってキャリアの展望が見えないんですね。例えば、学校の先生だったら、教頭になるとか校長になるとかありますよね。でも、保育士は良い意味でフラットなので、20代だろうと、40代だろうと一介の保育士でしかない。男が一生する仕事なのか?と疑問を抱くようになってしまいました」

 「変な話ですけど、悩むようになってから賃金が低いことも気になるようになりました。20万円もなかったですから。やはり先のことを考えると、これじゃ結婚もできない。公立の保育士なら、地方公務員なので年功で賃金が上がります。でも、非常に狭き門で採用も極めて少ない」

 「もし公立だったら、辞めなかったかも?」(河合)

 「う~ん……、どうですかね。私の場合は、転職を考え始めてたときに、ヘビー級のパンチをくらう事件がありましたから、何とも言えません。………ロリコンだって。そう。保護者の中で、ロリコンだとウワサになってると園長から聞いたんです。いや~、これはかなり堪えました。ロリコンですよ。な、なんで?って感じで。人格否定された気分でした。自分がどんなにがんばっても、結局はそんな風にしか見られていないのかと思うと、悔しくて仕方がなかった」

 「『ああ、もういいや』って辞めてしまいました。ただ、辞めた自分が言うのもなんですけど、男性保育士は貴重な存在だし、もっと増えたほうがいい。まぁ、いろいろな意味で。でも、保護者の偏見はきついので、それに耐えるほどの情熱を捧げることができるか?というと正直、疑問です。そもそも、保育士って一生働ける仕事になってないんです。賃金もそうですけど、私のようにキャリアパスが見えなくて不安になる人もいるでしょう」

 「今、改めて振り返って、転職して、良かったなと思いますか?」(河合)

 「ええ、良かったです。全く後悔はしてません。仕事の選択って、難しいですね。なってみないとわからないことって、本当にありますから。夢や希望、やる気だけじゃどうにもならない壁がある。なぜ、小学校の教師が男性でも何も言われないのに、保育士だとロリコンと言われてしまうのか。それだけ保育士の社会的地位が、低いってことですよね。何度も言いますけど、将来的には男性保育士が普通に活躍できるようになればいいなと思っています。賃金も重要ですけど、やっぱり保護者の理解はものすごく大切だと思います。すみません。なんかもう当事者じゃなくなっているのに、勝手なことばかり言って。本当、すみません。こんなので役に立つのかなぁ……」

 以上が、彼が話してくれた内容です。

次ページ 男だと「ロリコン」、オネエだと「気持ち悪い」