割り切った働き方をすると、ますます仕事がつまらなくなる

松崎:でしょ? 僕ね、リソースに関してもう1つ河合さんに聞きたかったことがあって。リソースの「使い手」の方の問題なんですが。

河合:はい。

松崎:河合さんが以前、この連載の中でも触れていたウエートレスのおばちゃんの話です(「「罵倒ツイッター」が映す地位に溺れる人々」参照)。彼女は「皿をテーブルに置く時、音ひとつ立てない」と語り、ウエートレスという一見単調な仕事に、自分の意義を見出しているじゃないですか。あれって、SOCの構成概念のひとつ、「有意味感」に近いですよね。

河合:ええ、有意味感は、自分の遭遇した困難に意味を見出す前向きな力です。と同時に、人はそこに意味を見出すから、自分の存在意義、存在する意味を感じることができる。有意味感は、すべての対処的行動の原動力になる部分です。今の日本人にもっとも必要な感覚だと、個人的には思っていますが。

松崎:僕も同じです。あのウェイトレスの女性は、仕事に意味を感じるからああやって前向きに取り組めるんでしょうか。学生とか、企業の若い人たちを見ていると、本来、有益なリソースとなるものが目の前にあるのに、その意味を見出す前に安易に辞めてしまったり、楽なほうに逃げたり、手放してしまっていることが多い印象を受けます。つまり、質のいいリソースが目の前にあるのにそれを使う力が低い。

河合:ウェイトレスの女性の有意味感は極めて高い。ただこれは「個」だけ問題ではなく、「環境」と「個」のかかわり方が重要なんです。「それでいいんだよ。ちゃんと頑張っているね」って、自分にアテンションしてくれる人がいたときに、初めて人は「自分の存在意味」を見出し、仕事を意味あるものにすべく前向きに取り組めます。

 でも、逆も真なりで、どんなたわいもない仕事だと思えても、一生懸命、プラスアルファを加えていく努力をすることも大切。例えば、お茶出しの仕事でも、ただお茶を入れて出すんじゃなくて、自分でお茶の勉強をしたり、ちょっとでもおいしいお茶を出すように工夫したり。そうやっているうちに「うまいな、コレ」なんて言ってもらえると、「やった~」っと自分の存在意義を感じることができて、有意味感も高まる。「鶏が先か、卵が先か」っていう面はあるんですが……。

松崎:なるほど。鶏と卵ですね。

河合:これ結構あっちこっちで話しているんですけど、私は大学を出た後に、憧れていたいキャビンアテンダントになったんですが、実際のCAの仕事は肉体労働が多くて、初フライトのときに「こんな仕事、意味ないじゃん」ってがっかりしたんです。新人の頃って、特に雑用が多いですから、本当に意味が見出せなくて。なので「だったら、もう適当にフライトをやって、ステイ先で楽しめばいいや」って。

松崎:割り切っちゃえばいいや、って思ったんですね。

河合:はい。でも、そういう働き方をすると、ますます仕事がつまらなくなる。そのときに会社で、「キャビンアテンダントって、大変だろう? 肉体労働だろう? でも頑張れよ」って声をかけてくれた人がいた。その時、「ああ、この人、わかってくれてるんだ」ってちょっとホッとしたんです。

 そしたらなんか、こうエネルギーが充電されるというか、「あ、そうだ。お客さんにサービスするときに、ただお食事出すだけじゃなく、ちょっと話しかけてみようかな」とか思うようになって。それで実際話しかけてみると、結構、楽しくて、それからいろいろな工夫をするようになったんですね。

次ページ クラッシャー上司の被害は、独りでは対処できない