自分がルールだから、自覚がない

松崎:基本的にタフですよ。人をクラッシュしていくんだから。

 クラッシャー上司って「仕事ができる」から、パワハラしても、その上の上司も見て見ぬふりをしてしまう。で、部下を執拗に責め、クラッシュさせるスタミナもある。基本的には能力が高く、エネルギーにあふれています。

河合:朝からスポーツジムに通って、夜遊びしても全くオッケー、24時間働けます!という、ハイスペックな人ってイメージですか?

松崎:そういうタイプもいますね。

河合:ただし、そういうタフな人でも、「自分の外にある傘」を使える人は、クラッシャー上司とはちょっと違いますよね?

松崎:「外にある傘」とは?

河合:外的資源です。ストレスという雨に対峙する傘の置き場は2カ所あって、ひとつは自分の心の中(=内的資源)。もうひとつは自分をとりまく環境(=外的資源)。外的資源でいちばん大切な傘が、先ほどお話しした、「傘を貸してください」と言える心の距離感の近い人です。

松崎:なるほど。どんなにタフでも、自分ひとりではできないことがあると認められる人ですね。

河合:はい、そうです。所詮、人間なんてひとりじゃ何もできないし、自分の能力にだって限界がある。それを素直に認めて、他者の傘を借りる勇気を持てる人はクラッシャー上司にはならないように思うんです。一方、内的資源だけで生きてる人、要するに自信満々で、自尊心も自己効力感も高過ぎる人が行き着くのは、「自分がルール」です。

松崎:そうそう。おっしゃるとおりです。自分がルールだから、自覚がない。

河合:ただ、そういう人って、実は弱い、というか、自分の心の中のリソースだけで乗り切れないことに遭遇すると、ポキリと折れちゃう。

松崎:ええ、そう思いますよ。クラッシャー上司は、承認がもらえなくなった瞬間にエネルギーが補給できなくなるので、そこで前進が止まっちゃうんです。

 僕が「クラッシャー上司」の中で書いた、事例の5番目。メーカーで地方営業所次長を務めていたDは、営業の結果は出してくるが、部下を2人をつぶし、家庭でもDVをふるう「クラッシャー」でした。その彼は、奥さんと子供が“夜逃げ”したのを機に、うつ病になってしまう。「妻の不満には全く気付かず」「部下に厳しかったのは確かだが、それもよかれと思ってやっていた」と話していました。

河合:そうですか……。

松崎:また、本で紹介した事例1のクラッシャー上司Aは、本の中では詳しく触れていませんが、最後は本人がメンタルに不調を来してしまった。何でうつになっちゃうかというとね、彼がクラッシュした若い女性社員の次に来たのが、帰国子女だったから。

河合:帰国子女が原因???

松崎:仕事はとてもできたそうです、ただ、帰国子女である彼女には、日本的な同調圧力だとか、あうんの呼吸が分からない。それで彼は余計頑なに、「お前のために鍛えてやっているんだよ」みたいな言い方でかかわろうとするわけです。

 するとね、「えっ、いや、別にいいです」みたいな反応で。帰国子女だから。「暖簾に腕押し」で、その部下の業務を自分で担うようになってオーバーワークになり、最終的にはメンタルを壊したんです。

河合:そうですか……。私もそうやって、おじさんたちを何人も泣かせてきました。「クラッシャー上司対策には、河合薫を」とでも言っておきましょうか(笑)

*3月29日公開予定「クラッシャー上司が「社員は家族」を好む理由」へ続く

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