「いつでも相談に来いよ」というのは最低
河合:ですね。これまでインタビューしてきた人たちの中には、パワハラに遭ってウツになってしまったり、会社を辞めた人たちもいました。その人たちが共通して言っていたのが、「最初はパワハラを受けて悔しいとか、ひどいとか、すごい思った。お前は何でこれができない、なんてダメなヤツなんだ、と否定され続けていると、パワハラを受けているという感覚が段々となくなって、最後には自分が悪いんじゃないかと思うようになった」と。
雨に慣れちゃう。SOSを出さないんじゃなくて、出せなくなる。気が付くと「上司の奴隷」になってしまうんですよね。
松崎:それ、すごくわかります。クラッシャー上司につぶされた部下たちにも、そういった感じがありました。
僕はね、いつもロジャース流の受容と傾聴と共感の3ステップの中で、共感というのは受容と傾聴の末に自然に発生してくるものだというふうに言っているんですよ。
河合:現代カウンセリングの祖と呼ばれる、カール・ロジャースですね。
松崎:はい。カウンセリング理論にはいくつかあるんですが、日本では一般的にロジャース流に基づいています。カウンセリングっていうとね、なんか特別のように思うかもしれないけど、上司部下関係も同じなんです。
部下に「ちょっと相談があるんですけど」とオファーされたら、まずは受容する。「おお、いいよ」と言って、そこで自分の時間枠を明確に提供する。この行為が受容なんです。ところが、おおかたの人たちは、それができない。
河合:上司も時間的余裕がないですからね。
松崎:でもね、そこで具体的に日時を決めなきゃ共感にならない。「おお、今度な」と先送りするのではなく、まず手帳を開いて予定を確認して、「今日はちょっと無理だけど、明日の10時から10時半までどうだ」と、自分の時間枠を明確に提供する。
河合:それだけで部下はホッとしますね。
松崎:僕はね、「いつでも相談に来いよ」というのは最低だと思ってるんですね。
河合:メディア業界では「やりましょう!やりましょう!」っていって、永遠に「やる」が来ないのは日常茶飯事ですが(笑)
松崎:業界の“外交儀礼”ってやつですね。
河合:でも、先生がおっしゃるように仕事でも、「じゃあ、いついつ、これで」ってなると、それだけで何か一歩進んだような。っていうか、実際に会って仕事につながらなくてもいいんです。その人とつながる。それだけで十分。
松崎:自分が困ったときに「この人は自分に時間を提供してくれるな」という信頼感が、芽生える。まさしく守護霊です。
河合:あああ、なんかこの辺(肩のあたり)にいろんな守護霊がいる気がしてきました。
松崎:(笑)いいですね、その感覚。
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