「岸辺のアルバム」の杉浦直樹さんこそが、クラッシャー上司です

松崎:でも、今の日本って雨がよく降りますね。

河合:産業医をやられていても、そう感じますか?

松崎:はい、思っています。少なくとも僕にも毎日、雨が降っています。

河合:へ? 先生には大して雨は降ってないようにお見受けしますが(笑)

松崎:降っていますよ、毎日。河合さんこそ降ってないでしょ?(笑)

河合:私は土砂降りです。編集のY田さんが一番知っています。毎週、びしょぬれで、泣きのメールだらけですから(笑)

Y田:本当です。時折ゲリラ豪雨にも見舞われています(苦笑)

松崎:アッハハ。人は見かけによりませんね(笑)

河合:ちょっと話をクラッシャー上司に戻しますね。先生はご著書の中で、40年ほど前に大ヒットしたテレビドラマ「岸辺のアルバム」のことを書かれていますね。

松崎:はい。意外かもしれませんが、「岸辺のアルバム」で杉浦直樹さんが演じた父親こそが、クラッシャー上司なんです。

河合:ちょ、ちょっと待ってくださいね。えっと実は私、「岸辺のアルバム」知らないんです。十分、観ていておかしくない年齢なのですが(笑)、その頃は日本にいなかったので。

松崎:ああ、そうそう、ちょうどその頃でしたか。ものすごい暴言を八千草薫さんに吐くんですよ。

河合:えっと、杉浦直樹さんが夫役で、八千草薫さんが奥さん役ってことですね。ちなみに私の「薫」は父が八千草薫さんのファンだったので薫になりました。って、どうでもいい情報ですが…(笑)

松崎:アッハハ、そうですか。その夫役だった杉浦直樹さんが猛烈商社マンなんですね。多摩川のほとりに一戸建ての家を建て、ローンを組んで、遅くまで働いて。接待やら飲み会やらで、毎晩夜1時ぐらいに、「サザエさん」の波平さんみたいにすし折を抱えて帰るんですよ。

河合:いい旦那さんじゃないですか。

松崎:真夜中の1時ですよ。1時ぐらいにピンポンピンポンして、八千草薫さんはちゃんと出てくる。すると玄関に上がるや否や、倒れ込むようにガーッと寝るんです。そこに八千草さんが「あなた、風邪ひきますよ」とやってきて、「あーっ」て起きるんですけど、「うるせえ~」とか言ってネクタイを投げ捨てる。スーツも投げ捨てるんですよ。

河合:最低ですね。

松崎:でしょ? なのに八千草さんは脱ぎ捨てた洋服を全部かいがいしく拾っていくんです。あれを久しぶりに見たときに寒気がしてね。これって今やったら大変なことになるし、絶対離婚でしょう。

河合:というか、今だったらお父さん、次の日会社に行くまでずっと玄関で寝て風邪ひいて、脱ぎ捨てたモノもすべてそのまま残っていますよね。

松崎:でしょう? でも、この時代はこれが普通だった。あの時代の夫は、「俺が一生懸命夜中まで猛烈に働いて一戸建ての家を建ててローンを払っているんだから、お前は俺に仕えて当たり前だ」みたいな論理がまかりとおっていた。ダンナに尽くすのが当たり前だ的な社会通念です。

 これは奥さんに対して、いっさい共感性がない。これぐらいのことは身内だからしてもいいんだという甘えなんです。

河合:甘えの構造ですね、まさしく、はい。

松崎:そうです。絶対的な甘えなんですよ。この身内への甘えから派生する共感性の欠如が、クラッシャー上司を生むんです。

 実は僕にも、かつてそういった側面がありました。