「月100時間」が争点って……

 フ~ッ……。経団連も経団連なら、連合も連合である……。

 一方で、日本労働弁護団は2月28日緊急声明を発表(「時間外労働の上限規制に関する声明」)した。以下にその内容を要約する。

 使用者団体が繁忙期に『月100時間』や『2カ月平均80時間』までの時間外労働を認めるよう要求し続けることは、多発する長時間労働による過労死・過労自死への反省を欠き、使用者としての責任を放棄するものであり、厳しく批判されなければならない。

 労働者の命と健康を守り、生活と仕事の調和を図ることができるような労働時間の上限規制がなされるべきである。

 裁判所も、月95時間分の時間外労働を義務付ける定額時間外手当の合意の効力が争われた事件(ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件)で、「労基法36条の規定を無意味にし、安全配慮義務に違反し、公序良俗に反するおそれさえある」としている。

 また、月83時間分のみなし残業手当の効力が争われた別の事件(穂波事件)では「月83時間の残業は、36協定で定める労働時間上限の月45時間の2倍近い長時間であり、公序良俗に違反するといわざるを得ず」との判決もある。

 日本医療労働組合連合会(医労連)も、
「夜勤交代制労働など業務は過重である。政府案はまさに過労死を容認するもので、断じて容認できない。月60時間が過労死ラインと主張する」
との談話を発表。

 医労連は昨年の3月7日にも記者会見を開き、「(労働時間の)上限規制と、(日勤と夜勤の)インターバル規制を法制化してもらいたい」と訴えた。背景には本コラムでも以前取り上げたとおり(「灰色の“自己啓発残業”へ誘う「過剰適応」の罠)、医師や看護師の過重労働の問題がある。

 残業規制の議論では一切考慮されていないが、同じ労働時間でも夜勤と日勤とでは身体にかかる負担は全く異なる。

 例えば、くも膜下出血で死亡し、2008年に労災認定を受けた看護師の場合、発症前6カ月の平均時間外労働時間は「過労死ライン」と呼ばれる月80時間より短い約52時間だった。しかし、月5回ほどの夜勤の日は20時間近くの連続勤務。つまり、夜勤勤務の負担を考慮しての判決といえる。

 私たちは「労働者」である前に、「人」という霊長類の動物である。1日24時間で成り立つ睡眠や心身のリズムを壊す夜勤は、身体の負担になって当たり前だ。

 つい先日も、ハーバード大学などの共同研究グループが「看護師」の夜勤が心身に与える影響結果を発表した。この調査は、約7万5000人分というサンプル数の多さに加え、1988年から2010年まで22年間も縦断的に行われたもので、信頼性が極めて高い。

 分析の結果、1988年から2010年の22年間に、対象者のうち約1万4000人が亡くなり、うち約3000人は心臓や血管の病気、約5400人はがんだった。

 交代制夜勤のある人は、全く夜勤の無い人よりも死亡率が11%高く、中でも夜勤を6~14年続けている女性は、心臓や血管の病気による死亡率が19%、15年以上続けている人は23%も高かったのである。

 また、この調査では「肺がんによる死亡率が25%」高かったものの、がんと交代制夜勤との関連は確認されなかったと報告している(2007年にWHOの国際がん研究機関は「交代勤務は おそらく発がん性がある」と認定している)。

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