36協定はそもそも青天井ではない

 だいたい、36協定はあたかも「青天井」のように言われているけど、キチンと上限はある。

 「1日」「1日を超えて3カ月以内の期間」「1年」のそれぞれについて、延長することができる協定の期間により、延長可能な時間の限度が定められているのだ(労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準<労働省告示第百五十四号>)。

労働時間の延長の限度
労働時間の延長の限度

 しかしながら、この「基準」はいわゆる行政規則。法律や政令のような法的拘束力を有するものではないため、使用者の「任意の協力によって実現されるもの」(行政手続法32条)。つまり、強制できないという弱点がある。また、労使で特別条項を結んでしまえば、延長も可能。そのため、事実上青天井になってしまうというわけだ。

 それがゆえに 、
「んもう~~!経営者、ちゃんとやってよ~!!」
と言ってるだけのこと。

 「過労死」が後を絶たず、うつ病患者も増え続けているので、「言ってもわかなんなきゃ、お仕置きするぞ!」と。本来であれば先の表で定められた時間に関して罰則規定を追加すれば済むだけの話なのだ。

 いったいどこから「100時間」なんて数字が出てきたのか?
 なぜ、経営者は自分の成功体験だけに頼るのか? 
 なぜ、労働時間と健康、労働時間と生産性に関するエビデンスを全く注視しないのか?
 なぜ、痛ましい事件のときには口をつぐんでいた人が、ここぞとばかりに「残業規制はおかしい」と反撃するのか? 

 前置きが長くなった。というわけで、今回は「残業規制はなぜ、必要なのか?」「なぜ、いいじゃん、好きなだけ働いて~」と言えてしまうのか? について、脳内の“突っ込み隊”と一緒に考えてみようと思う。

 では、現段階で明らかになっている「時間外労働の上限をめぐる労使合意の原案」について。焦点となっているのは経団連が主張する「繁忙期月100時間案」を連合が認めるかどうかだが(3月13日夜、「上限100時間」で合意したとのニュースが流れた)、報道によれば、以下のような内容で調整が進められている。

・罰則つきの時間外労働の上限については、「月45時間、年間360時間を原則的上限とする」とする
・繁忙期など特別な事情があれば労使協定の下、年間の上限を「720時間(月平均60時間)」とし、その場合でも、「単月なら月100時間」「2カ月から6カ月間の平均80時間」までは認める
・36協定を結ぶ際には、健康確保措置や時間外労働の削減に向けた労使の自主的な努力規定を設けることを義務づける
・上限規制の在り方について、法改正から5年後に再検討することを、労働基準法の付則に明記する
・退勤から次の勤務開始までに一定の休息時間を設ける勤務間インターバル制度は、普及に向けて事業主に導入の努力義務を課すことを法律などにも明記し、労使双方を含む検討会を立ち上げる
・過労死対策については、メンタルヘルス対策などに関する新たな政府目標を検討する
・職場でのパワーハラスメント防止に向けた対策を労使を交えた場で検討する

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