全くもってワケがわからない。
 意味不明。イミフだ。

 これは「日本という病」?あるいは「経営者という病」というべきか。

 しかも、感度が低い。なんなんでしょ。この感度の低さ。

 元・電通社員、高橋まつりさんが自殺に追い込まれた際に、
「月当たり残業時間が100時間を超えたくらいで過労死するのは情けない。会社の業務をこなすというより、自分が請け負った仕事をプロとして完遂するという強い意識があれば、残業時間など関係ない」
と某大学教授がコメントし、世の中の人はいっせいに批判した(当人は、高橋さんの事件が報じられた同じ日に公表された過労死白書に対するコメントだったとしている)。

「過労自殺した女性を『情けない』と吐き捨てた」
「こういう人たちが労災被害者を生み出している」
「死者にむち打つ発言だ」と。

 そのとおり。こういう人たちが「労災被害者」を生み出しているのだ。

 というのにどういうわけか、“今”「好きで長時間働いてなぜ悪い」「残業を規制するのはおかしい」という意見があちらこちらに飛びかっている。なるほど。あのときは炎上を恐れて言わなかったけど、「100時間超えたくらいで……そのとおりだよ~」と思った人たちが、かなりの数いたってことだ。

 ええ、そうです。残業規制を巡る問題である。

 そもそも「残業の上限を規定して罰則を設ける=働き方改革」ではない。

 厚生労働省によれば、
「『働き方改革』は、一億総活躍社会の実現に向けた最大のチャレンジであり、日本の企業や暮らし方の文化を変えるもの」
とある。

 長時間労働を日本の文化ととらえれば、一種の働き方改革になるのかもしれないけど、私には単なる法律上の問題としか思えない。

 36協定を抜け道に残業を青天井にしてしまっている企業に、「言ってもわかんないんだったら、罰則をつけるぞ!」と言ってるだけ。

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