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ミドルになったら、「数」より「密度」

 では、研究に戻ろう。

 この調査では、「社会的つながり」を、「広さ」(社会的統合)と「質」(社会的サポート)に分けて質問している。

 「広さ」については、

結婚の有無や、家族、親戚、友人とのかかわり合い、地域活動、ボランティア活動、教会への参加などについて「接触する頻度」「一緒にいて楽しいか」「居場所があるか」を問う質問項目、

 「質」については、

各々と「互いに支え合う関係にあるか」「互いのことを分かり合えているか」「自分の本心を出せるか」など「心の距離感の近さ」を問う質問項目、

に回答してもらい、得点化している。

 その結果、

人間関係の「広さ」は、若年期(10代~20代)と老年期(60代後半以上)の人たちの健康に、

人間関係の「質」は 、壮年期(30代~40代前半)から中年期(40代後半から60代前半)の人たちの健康に、

高い影響を及ぼすことがわかった。

 具体的には、

・若年期の社会からの孤立は、運動をしないのと同じくらいCRPによる炎症リスクを上昇させていた
・老年期の社会からの孤立は、高血圧のリスクに大きく関連し、糖尿病患者と高血圧の関連をさらに上回った
・中年期の社会的なサポートは、腹部肥満とBMIを低下させていた
・中年期の社会的なサポートがない人は、CRPによる炎症リスクが高かった

といった傾向が明らかになったのである。

オヤジは、運動するより親友作りに精を出した方がいい?

 要するに、大雑把にまとめると、

「若いときはあっちこっちに顔を出してネットワークを広げればいいけど、健康不安が高まるミドルになったら、健康な食事や運動と同じくらい、信頼できる(親密な)友人は大切だよ」

という結果が出たというわけ(詳しい結果を知りたい方は原著をお読みください)。

 そういえば、学生が「先生、友達、少なっ!」と、私のフェイスブックの“お友達”の数を見て笑い転げ、「今どきの若者たちの間では、最低でも1000人以上いないことには、“こいつは使える”と思われないんですよ」と話してくれたことがあったが、友だちの数で人の価値を計ることの是非はさておき、若者がネットワークを広げる行為は健康にもプラスになるってこと。

 「ん? じゃあ、オヤジは運動するより、親友作りに精を出した方がいいってことか?」

 ……ふむ……。半分は正解といっていいだろう。

 この研究で明らかにされたのは因果関係だけで、「どう影響するのか?」のメカニズムは示されていないが、それなりのエビデンスはある。

 私がこれまで行ってきた調査や先行研究では、「親密な友人」の存在は、ストレスの雨に降られたときの大きな傘になることが明らかになっている。つまり、自分ひとりではどうにもならない困難に遭遇しても、心の距離感の近い存在が、「たったひとり」でもいれば、なんとか対処でき、健康状態を保てるのである。

 「でも、この年になって、親友なんて作れない……、っていうか、友だちいない」

 恐らくこういう方も多いに違いない。かくいう私も友だちは極めて少ないので、Yちゃんがいなくなったら……、と考えるだけでゾッとする。

 いずれにしても、「孤独(あるいは孤立)=social isolation 」は現代社会のキーワードのひとつだ。そこで、今回はオジさんの悩みを取り上げようと思った次第です。