今回は「ミドルの孤独」をテーマにアレコレ考えてみようと思う。

 まずは、年明けに発表され、日本でもちょっと話題になっている興味深い論文から紹介する。

 “Social relationships and physiological determinants of longevity across the human life span”と題されたこの論文は、今年1月、米国科学アカデミー紀要( Proceedings of the National Academy of Sciences:PNAS)に掲載された。

 論文の内容と結論は、ワシントンポストに掲載された記事のタイトルでわかる。

「Your relationships are just as important to your health as diet and exercise」

 要するに、「心も身体も健康でいたければ“つながり”を大切にね!」という調査結果が示されたのである。

「孤独」が世界的な社会問題になっている

 調査を行ったのは、米ノースカロライナ大学チャペルヒル校社会学科研究グループ。

 「社会的動物である人間にとって、孤独が及ぼす影響は“皮膚の下”に入る(get under the skin)」との視点から、「社会的つながり」と「心臓病や脳卒中、癌のリスク」の関連を分析した。最大のウリは、大規模な異なる年齢層(若年、壮年、中年、老年)の縦断データを用い、因果関係を明らかにした点だ。


※分析に用いたサンプルは、Add Health(7,889人)、MIDUS(863人)、HRS(4,323人)、NSHAP(1,571人)の4つで、それぞれ2時点の縦断データ。健康度の測定項目は、「血圧、ボディマス指数(BMI)、ウエスト周囲径、炎症の測定指標となる特定のタンパク質(CRP)」で、これらはいずれも心臓病や脳卒中、癌の発症に高い関連性をもつ。

 ちょっと話がずれるが、「孤独」に関する研究は、ここ数年激増している。日本では高齢者に特化したものが多いが、世界的には年齢に関係なく関心の的だ。

 例えば、2005年のOECD(経済協力開発機構)報告書では、「孤独」に関する調査の結果が盛り込まれた。そのこと自体、「孤独」が社会的問題になっていることを意味するのだが、この調査では、日本の社会的孤立の割合は、OECD加盟国の中で最も高かった。

 また、オピニオン誌「The Atlantic」でもアンケート調査を行い、「重要な問題を話し合える相手がいない」と答えた米国人は、30年前には10人に1人だったが、いまでは4人に1人まで激増している実態が明らかになっている。

 つまり、今回の研究もその「孤独」を軸に、健康への影響を明らかにしたところが話題を呼んだのだ。

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