もはや、「たかがバイト」ではない
なぜ、「ブラックバイト」という言葉が生まれたのか?
アルバイトをする学生の中には「お小遣いのため」ではなく、「生活のため」に働いている学生も多い。学費はかなり高くなっているし、親の賃金も上がっていないので仕送りも減少した。返済地獄に陥りたくないとの不安から、奨学金申請をためらう学生もいる。
おまけに、昨今の労働市場を精査すると、「たかがバイト」ではないこともわかる。
企業はやっかいな「派遣社員」を減らし、手軽な「パート・アルバイト」を増やす方向にむかっているのだ。
その傾向を踏まえ、先週発表された「2016年分の労働力調査(詳細集計)の速報結果」(総務統計局)を見てみると、学生のバイトが実際に増えていることがわかる。
正規社員は2年連続の増加だが、非正規は7年連続で増加している。非正規の前年比の増減率を年代別にみると、
「15~24歳」=4.3%増
「25~34歳」=3.8%減
「35~44歳」=2.3%減
「45~54歳」=3.1%増
「55~64歳」=0.2%増
「65歳以上」=12.0%増
となっていて、団塊の世代の定年退職などにより増加傾向にある65歳以上の高齢者を除くと、「15~24歳」の伸び率が最も高い(非正規には、パート・アルバイトも含まれる)。
また、「ブラックバイトユニオン」のHPによると、「フルタイムで働くフリーターの増加も、学生アルバイトの位置づけを変えた」とし、
「かつては正社員だけがやっていたような責任の重い仕事が、学生アルバイターのような低賃金の非正規雇用労働者にも押し付けられるになってきた。これを、「非正規雇用の基幹化」と言う」
と記されている。
学生のバイトにノルマを課したり、欠勤に罰金をとったり。そういった問題も、「バイトがたかがバイトではなく、社員並みの労働を期待している」からこそ起きている問題なのだ。
たかがバイト、されどバイト。
バイトはもはや、バイトではない。
「アルバイトにはお金以上の“価値”がある」は、雇う側が決して口外しない“心のセリフ”なのだ。
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