「これ、やりがい搾取じゃん!」

 動画は3本作成されていて、これは「主人公編」だ。残りの2本は全く同じ状況を、「主人公を心配していた先輩」と「内定をもらえなかった学生の客」の視点で捉え、同時に公開された。

 ブラックバイト、恵方巻きノルマ、といった「アルバイト」に関する報道に加え、“やりがい搾取”が問題になっているご時世だ。

 「お金以上の価値」なんてフレーズを使えば、待ってました!と言わんばかりに、ネット界の突っ込み隊が暴れ出す。その予想どおり「あるわけねーだろ」というツイートと共に、一気に拡散し、

「これ、やりがい搾取じゃん!」
「ありえね~」
「ブラックバイト推進運動か?」
「やりがい、なんて余裕ある時代の話。今の学生は生活のためにバイトすんだよ!」

などなど、批判の嵐となった。

 ……、学生たちが言わんとしていることはわかる。

「バイトで失敗すると、メチャ落ち込む~」
「うん、折れる」
「自分では一所懸命やってるのに、タルんでるとか言われちゃって~」
「マジ、折れる」
「でもさ~、そんなときお客さんから感謝されたりすると、ちょっと元気でるんだよね~」
「そうそう。こんな自分でも、誰かの役にたってるんだ、ってメチャ救われる~」
「やりがい!」
「そう、やりがい!」
「うん、やりがいのある仕事って、いいよね!」

「……アルバイトにはお金以上の価値がある……」

 なんてやりとりの末、できあがったCMなのだろう(完全なる私の妄想ですので、あしからず)。

 とかくいまどきの学生たちは、過剰なまでに「失敗」を恐れる。

 失敗とは言い切れないほど些細なことでさえ落ち込んだり、わからないことがあっても「こんなこと聞いたら、ダメなヤツって思われるから聞けない」などと子羊のごとく怯えたり。

 

 感度の高いセンサーを持つ若者は、“オトナ世界”が、たった一回の失敗でも「ダメなヤツ」「使えないヤツ」とレッテル貼りするのを知っているのだ。

 なので上記の動画が「失敗」から始まっているのは、実に“今”らしいし、先輩を出演させたのも、“仲間至上主義”の学生らしい。と同時に、「しんどいけど、こんないいこともあるよ!」というのも、小さな幸せ探しに長けている今どきの学生らしい、真っすぐすぎるほど素直な演出である。

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