“野ざらし”の職場

 新人看護師さんの状況を思い起こしてほしい。

 看護師として働き始める時期には、「期待、希望」という光が差し込む一方で、初めてのことばかりでストレスの雨も降っていたはずだ。そして、その雨をなんとかしのいでいるうち、「一人前の看護師」として多くの患者さんを任された。

 ベテランの看護師でさえ「勉強に終わりはない」という医療の世界だ。高齢化社会で重症患者も多い。

 そういった過酷な状況下で他者の傘を借りようにも、周りの先輩たちもいっぱいいっぱいだから借りることが出来ず、先輩たちにも彼女に「傘を差し出す」余裕はない。

 いわゆる突然死の過労死は、何度かこのコラムでも書いたように前頭葉にある疲れの見張り番の疲弊で、「疲れを自覚せず、死ぬまで働いてしまう」メカニズムにはまるわけだが(「“スーパーネズミ”はなぜ死んだ?」参照)、過労による自殺は「生きる力」であるSOCが機能しなくなった結果だ。

 何度でも言う。職場で降り注ぐ雨に濡れ続け、生きる力が萎えた結果なのだ。

 もし、雨が降ってきても、

・足りない知識を補うサポート体制が現場にあったり、
・職場の風通しがよく、ちょっとした相談ができたり、
・落ち着いて勉強できる時間を持てたり、
・その日の疲れをとる睡眠時間(6時間以上)が確保できたり、
・休日に友人とドライブに出かけたり、
・美味しいものを食べに行ったり、
・友人と愚痴を言い合って笑い飛ばせる時間があったり、
・趣味を持てる余裕がある生活をできたり、
etc、etc…

そういったいくつもの「傘」があれば、「私、なんでこんなにダメなんだろう」ではなく、「うん、なんとかできた。よくやった!」と、今度は“自信”という傘を手に入れ、SOCを高めていくことができる。

 そんなSOCを高める職場環境の会社が、日本社会にどれだけ存在するのだろう。